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上海最先端レポート

富裕層向けの会員制農場がブームに(上)~日本人が知らない中国事情(31)
上海最先端レポート
2010年6月19日 14:33
劉 剛

<小衆消費者(富裕層)向けの農業サービス>
 近年、上海では、消費者を区分けするため、「大衆消費者」の対語に「小衆消費者」という用語が作られ、度々新聞やテレビなどで取り上げられています。文字通りに、「小衆消費者」は人数の少ない、特定の消費者のことです。多くの場合「小衆消費者」は富裕層を指します。先般、「小衆消費者」に向けた会員制農場が話題になりました。

 上海では、庶民は野菜を市場またはスーパーで買いますが、無公害農産物に特にこだわりのある富裕層は特定の農場から購入しています。
 上海郊外にある会員制農場のサービスを見てみましょう。顧客はすべて会員です。普通会員が年会費1.5万人民元(約20万円)で、VIP会員の年会費が3万人民元(約40万円)に達します。その分の特典として、普通会員には年中毎週1回、旬の新鮮な無公害野菜を5キログラム配ります。VIP会員には春から秋まで週2回、秋から春まで週1回野菜を配るほか、毎月農場地産の鶏、鴨、魚などが数回に渡って送られます。会員制農場は、会員の自宅までの「お届けサービス」を提供するため、クール配送車や市内や郊外に冷蔵倉庫も配置しています。
 そのほか、会員が休暇に農場に遊びに行ける特典もあります。農作業を体験したくなれば、農芸師が指導してくれます。自分が食べる野菜を自分で作ることもでき、そのことが顧客の満足度を一層高めています。

 会員制農場と一般農場の違いについて見てみましょう。

 まず、最優先させているのは無公害で、化学肥料や農薬を一切使わないことです。安全、安心な野菜を作り、提供するのは一番の売りです。次に、農産物を栽培する前、1年間をかけて土壌を肥やします。草を生やし、畑に枯死して土の中で腐らせるのです。上海の土地の価値を考えたら、事業主に相当な財政実力がないと、このぐらいの時間をかけることはとてもできないでしょう。

 第三に、農場の灌漑用水を特別にろ過処理し、水質を飲用できるレベルまで引き上げます。きれいな水を飲ませてこそ、美味しいかつ安心な野菜が作れるとの考えです。最後に、農場の隅から隅まで、光ファイバーを敷き、ネットカメラを通じ、一日にいつでも農産物の育成状況を把握できるような体制が整えています。

(つづく)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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