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表示規制の狭間で揺れる健康食品(7)~日本健康・栄養食品協会のゆくえ
特別取材
2010年6月21日 11:07

日健栄協理事長人事をめぐる動き

 (財)日本健康・栄養食品協会(東京都新宿区、理事長:林裕造)の次期理事長が誰になるのか、業界関係者の間で関心の的となっている。これまで、京都府立大学教授で日本抗加齢学会理事長の吉川敏一氏や慶応大学の信川益明教授、国立健康栄養研究所出身の学識者としては、内部改革に尽力した渡辺昌氏と消費者庁で行なわれている「健康食品の表示に関する検討会」で座長を務めている神奈川工科大学の田中平三教授らの名が挙げられていた。また、厚労省出身の元官僚の名前も多くの関係者の噂に上っている。
 ただし、今回の理事長選出では、非常勤・無報酬という一定の条件が設けられている。理由は、公益財団法人に移行するまでの暫定措置という事情を踏まえているからだ。既報のとおり(6月8日Net-IB)、日健栄協は9月にも公益財団法人への申請手続きを行なう予定で、正式に認可されれば、定款変更等により役員人事は刷新されることになる。従って、7月1日からの新体制は、公益財団法人化までの暫定人事に過ぎないというのが事情通の見方だ。
 このような経緯を踏まえて、上記複数の候補者は非常勤・無報酬という条件に難色を示したらしい。有体にいえば日健栄協の要請を断ったということだろう。そこで浮上してきたのが厚労省出身の人物。
「厚労省の元幹部が理事長になるなど、もってのほか。日健栄協もこれで潰されてしまうだろう」日健栄協のOBの間で同人事を嘆く声も多い。
 しかし考え方によれば違う見方もできる。

厚労省と消費者庁の綱引き

 特定保健用食品(以下、特保)や栄養機能食品に関する問題は、健食表示検討会を通じてすでに消費者庁に預けられた形になっている。特保枠の拡大によって健康食品をひとくくりにするという論法は過去何度も繰り返された議論だが、1兆円規模のマーケットを机上の論理で壊滅させることなど、まずもってできっこない。まして同検討会は8月に終了して、食品安全委員会での結論待ちとなっている。今のところ、一般の健康食品に関する議論はまったく行なわれていないに等しい状況である。結論が出る出ないはともかく、「いわゆる健康食品」の処遇の問題は棚上げせざるをえないのが現実だ。
 一方の厚労省は、医療費削減の最重要課題を抱えている。2008年度で34兆円を突破しているとされる重い負担である。その免罪符に健康食品を当てたいというのが厚労相の本音ではないか。同省はジェネリック医薬品の普及など医療費削減に努めているものの、その削減効果は薬剤費6兆円のなかでもせいぜい1兆円ていどにすぎない。医療費削減のキーワードは「予防」にある。
 予防の観点に立って健康食品の普及が進めば、潜在的なマーケットの掘り起こしにも大きな経済効果が期待される。団塊世代の退職に象徴されるように、2025年には日本人の3人に1人は65歳以上になろうという高齢社会の出現がある。当然のことながら、年金問題と並んで高齢者の医療費の高騰が大きな社会問題となる。厚労省としては遅きに失したとはいえ、これらの高齢者の健康・医療問題を考えると、「予防」という観点からのさまざまな施策を強力に推進していくことが肝心だと考えているはずだ。すなわち、生活習慣病(高血圧・糖尿病・がん)の予防のために、運動・栄養・休養というあまりにもありふれた施策をもっと強烈に、特に中高年者に訴えていかねばならないと考えているのではないか。そのなかの栄養という面において、欧米では一般的になっている、ビタミン・ミネラル・ハーブなどのサプリメントを中高年者が自らのポケットマネーで購入できるように法整備をすることが早晩必要になるだろう。サプリメントの普及は医療費削減の救世主ともなりうるのだ。
 ましてや、欧米から健康食品に関する規制緩和の要求は日増しに強まっている。厚労省としては、これに何とか応えなければならないと知恵を絞っている状況ではないだろうか。ちなみに、米国では法整備を整えた後、マーケットは倍増した。

日健栄協が突破口になれるか

 厚労省にとってその突破口となるのは自らの外郭団体である日健栄協しかない。大正製薬や佐藤製薬などの医薬品メーカーのみならず、味の素・アサヒビール・サントリー・キリン・ハウス・カゴメ等の大手食品メーカーは健康食品の販売に注力しているのが現状であり、これらの会社は日健栄協の有力な会員でもある。とすると、同財団に元官僚を送り込んでまずはインフラ整備を行ない、次期理事長の選出に備える。そういう戦略的意図が浮かび上がってくる。これは厚労省の周到な消費者庁対策のようにも見える。
 現在、次期理事長の有力候補として、元健康局長の名前が挙がっている。「ほぼ間違いない」との複数の関係者の弁がある。
 ただし、「理事長が誰になろうが、事務局がしっかりしなければ何も変わらないだろう。事務局が戦略的に動くことができるような環境作りが必要」(日健栄協OB)との冷めた見方もある。

【田代】
 

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