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中洲バトルロワイヤル

中洲バトルロワイヤル2010(18)~客引きはなぜ無くならないか?
中洲バトルロワイヤル
2010年6月22日 08:00

<増え続ける「フリー」>

 ひと昔前に比べ、中洲の健全化が進んでいると言う中洲っ子は少なくはない。かく言う小生も実感している。以前にも書いたが、昔は悪質な店が真昼間から中洲大通りで客引きをしているような状況だった。中洲当然、そういう客引きに連れて行かれた先には、ぼったくりの被害が待っていた。
 とはいえ、夜の中洲大通りを歩いていると客引きに何度か声をかけられる。そこで小生は、中洲の治安を守る博多署へ、客引きの現状について話を聞きにいくことにした。以下、取材で勉強してきたことを説明しよう。

 まず客引きは、大きく2種類に区分されるという。店の経営者や従業員がやる客引きと、店との契約関係がなく、店に客を連れて行くことで紹介料を得る「フリー」と呼ばれる客引きだ。なぜ区分しているかというと、取り締るときに適用される法律が違うからだ。
 前者は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」が適用され、実質30万円ぐらいの罰金と店へは1カ月ぐらいの営業停止処分が下る。一方、後者の場合は、県の迷惑防止条例で定められたつきまとい行為の禁止が適用される。つまり、「フリー」が捕まっても、店との関係性が立証できなければ、罰金は「フリー」のみに科せられる。

 この「フリー」への罰金は、今年(2010年)の4月1日に改正された。それまで実質10万円ぐらいの罰金であったため、客引きに頼る店側も直接行なうことはなく、「フリー」が増加していく傾向であった。しかし、改正後、「フリー」に対しても実質30万円ぐらいの罰金が科せられるようになった。この改正は、客引き業界に衝撃を与えたという。

<狡猾な違法行為の手口>

 客引きの手口であるが、腕をつかんで店へ引っ張っていくような強引なやり方は、ほとんど見られなくなった。ぼったくりにおいても、店との交渉次第では代金が戻ってくることもあるという。もっとも手口については、巧妙かつ狡猾になっているらしく、泥酔して記憶も定かではなくなった客を狙って行なわれることもあるという。風俗店の場合は、被害者が表ざたになることを避ける傾向があるため、事件に発展することが少ない。

 では被害者にならないためにはどうすればいいか。有効な防止策は客引きついて行かないことだ。少し考えれば分かるだろう。違法な客引きに頼らなければ客が来ない店である。店の料金、サービスなども健全である可能性は低い。また、博多署によると、客引きおよび客引きに頼る店は暴力団の資金源になっている可能性が高いという。そして、客引きの撲滅に最も有効な手段は、「客側が客引きを利用しないこと」である。

 2009年で検挙された中洲の客引きは31人。10年5月末の時点でもすでに15人が検挙されている。取り締りの強化により検挙数は上がっているが、一方で、新たな客引きが供給されているという。裏を返せば、それだけ客引きに対する客側の需要があるということだ。
 中洲特別捜査隊は、「暴力団の資金源対策」と「繁華街の環境浄化」のため、毎日、中洲をパトロールしている。中洲の健全化のためには、「客引きを利用しない」という客側の役割も大きいことを自覚しなければならない。

(つづく)

長丘 萬月(ながおか まんげつ)
 1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。


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