いま、なぜサプリメント法なのかを問う前に、まず、なぜサプリメントなのかを問うべきかもしれない。この議論は本質的に用語の問題にまで踏み込まざるを得なくなるが、ここでは煩雑な議論を避けるために、健康食品は広い意味でのサプリメントに含まれると想定して、サプリメントという用語を健康食品を含めた包括的な意味で統一的に捉えることにする。
そこで最初に考えなければならないのは、サプリメント(健康食品)は日本において、日本人に特異的な問題として取り上げなければならない課題なのかということである。現実にはそうではないことは明白である。コーデックス(Codex)を代表とする国際機関や欧米を始めとする多くの国や地域でサプリメントに関する議論が幅広く進められているのは周知のことであり、しかもこれらの議論のほとんど総てが法律を根拠に進められている。サプリメントは国や地域に限定されることなく、人類にとっての必要性が問われる問題であり、たとえ健康食品と名を変えてもその本質は変わらないはずである。従って、サプリメントの意義や必要性を問うにしても、またその存在に係る法制度化の問題を問うにしても、国際的に進められているサプリメントに係る議論を無視する訳にはいかないはずである。もしある特定の国が、サプリメントに関する現在の国際的な状況を無視して、独善的な考え方に基づいて制度化を図るようなことがあれば、よほど注意しないとサプリメントの本来的な意味を見失うばかりでなく、国民が受けるべき恩恵も失わせることになりかねない。
<食品機能性は世界の共通認識に>
さて、サプリメントの実質について考えてみたいと思う。言うまでもないことだが、サプリメントの実質は食品成分の機能性と表裏一体の関係にあると考えてよい。1980年代に当時の文部省が主導した、食品の機能性に関する特定研究は、食品成分に様々な生体調節機能が存在する事を明らかにして、食品分野に新たな視野を開くことになった。この特定研究による成果は国際的に大きな反響を呼び、食品成分の機能性研究は国際的な拡がりをみせることになる。これと並行して、食品成分の機能性を人類にとって有用な存在として利用するための法制度化が欧米を中心にして進められるようになった。現在では、欧米のみならず、日本周辺のアジア諸国をはじめとして世界の多くの国や地域でサプリメントの法制化が進み、有効性、安全性、品質などの確保を前提に、サプリメントの有効利用を確保するための制度が確立している。サプリメントの利用に係る制度が多くの国で確立しているということは,取りも直さず、サプリメントに用いられる成分に生理学的な機能、或いは生体調節機能が付与されており、何らかの形でヒトの健康維持に有益な役割を果たしているという現実を、各国政府が受け入れていることを示している。
<プロフィール>
大濱 宏文(おおはま ひろふみ)
東京大学応用微生物研究所および名古屋大学医学部生化学教室にて「ビタミン」「酵素」「活性酸素」等の研究に従事。医学博士(名古屋大学医学部)。現在、バイオヘルスリサーチリミテッドの代表取締役、一般社団法人 日本健康食品規格協会の理事長を兼務。ほかに、名古屋大学医学部非常勤講師を3年間、厚生労働省「健康食品の安全性確保に関する検討会」など多数の検討会委員を務める。日本学術会議連携会員、IADSA科学者会議委員、日本臨床栄養協会サプリメントアドバイザー認定機構理事、健康食品管理士認定協会理事、日本臨床栄養学会評議員、日本健康科学学会理事、(財)日本健康・栄養食品協会理事ほか。
主な著書に、「Nutraceutical and Functional Food Regulations in the United States and Around the World」 (Ed. By D.Bagchi : Academic Press)(分担執筆) 、「ビタミン・ミネラルの安全性・第2版」(By J.N.Hathcock: 監修 橋詰直孝、第一出版)(翻訳)、「エビデンスに基づくハーブ&サプリメント事典」(By A. Fugh-Berman: 監修 橋詰直孝、南江堂)(編集・翻訳)などがある。
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