今年6月8日、アメリカ政府は、北京で「投資移民」を望む中国富裕層へ向けて、新たな政策を発表しました。それは総額50万米ドルを投資すれば、約3年以内にアメリカの永住権を与えるというものです。
アメリカ国務院が公表した最新データによると、08年10月から09年9月まで、「投資移民」を許可された人数は、08年度の1,443人から4,218人に上りました。そのうち、約7割が中国からの申請者です。
一方、カナダのイミグレーション数を見ると、09年、「投資移民」で世界から来る2,055人のうち中国人は1,000人を占めています。最低投資額が40万カナダドル(約3,480万円)だとしても、348億円のお金が中国からカナダに流出したことになります。これは、上海万博の中国館の費用に相当します。
そのほかオーストラリアやシンガポールでも、中国富裕層移民をかなりの人数で受け入れています。これらの国では中国富裕層移民を誘致するため、色々な優遇策が打ち出されているのです。
08年、シンガポール政府は、遺産税を取り消すことに踏み切り、中国富裕層を一層引きつけることになりました。また、中国に永住権を持つことで、シンガポール国内では一定期間しか住めないという制限も撤廃されました。あるいは、中国企業家が中国でビジネスを営みながら、シンガポールの永住権を持つことも可能となっています。一連の政策の効果により、中国の金持ちが相次いでシンガポールに高級マンションや別荘を購入し、「投資移民」になったとされています。
では、なぜ、富裕層における海外移民への関心が高まっているのでしょうか?
最大の要因は、個人資産の安全性への配慮です。
改革開放政策が実施されて30年間、数多くの一般人がいろんな理由で金持ちになりました。今年4月に発表されたあるリッチリストによると、国内資産において億を単位にした人が5万人以上いました。この富裕層のなかの特に民間企業家が不安を抱いています。民間企業は官僚権力に依存してこそ、発展してきたという背景があるからです。しかし、「政界は『一寸先は闇』。ますます闇は深くなるばかり」です。公平、公正な市場競争環境を求めても、実現するのは、かなり先のことだと思われます。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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