成功体験は捨てよ 若者と新技術が切り拓く時代へ
―現在、「光の道構想」というものを原口一博総務大臣やソフトバンクの孫正義社長などが推し進めています。これについてはどのようにお考えですか。
村上 ブロードバンドというのは普及すべきだし、してきたと思います。ただ、アメリカでオバマ政権がグリーンニューディールというなかで3つのことを言っており、孫さんはこれを参考にしているのだと思います。アプリで言えば医療ITと教育ITがあります。孫さんも、電子カルテとか電子教科書とかおっしゃっているのは同じですよね。
次にブロードバンドというと、アメリカって以外に進んでないのですよね。日本とか韓国のほうがずっと進んでいて、とくに日本の場合は国土が狭いということもあり、光ブロードバンド普及率は人口比で90%と言われており、あとはどのプロバイダと契約するかというだけです。
だから、光の道というのが単に光ケーブルを敷くということならば、2つの点で疑問があります。まず、すでに90%普及しているのではないかということと、あと10%は別に光ケーブルでなくてもいいのではないかということです。
結局、30%しか使われていない理由はアプリケーションに魅力がないからだと思います。それを政策的に無理やり光ケーブルを100%繋げるというのは、私はいかがなものかと思いますね。
―話は御社のサービスのことになりますが、ツイッターが爆発的にヒットしているなか、グーグルバズの持つ意味とは。
村上 グーグルの場合、いわゆるアップス(Apps)というかたちで、企業ドメインのもとでサービスを出しています。そのためバズ(buzz)も特徴があります。特定のドメインのなかで、閉じたかたちで特定の社員同士がコミュニケーションをとるツールという部分の方が大事なのかもしれません。
「グーグルはどこそこと競合している」と皆さんよく言われますが、そういう意識はほとんどありません。グーグルは広告でしかお金儲けをしていませんから、インターネット人口が広がりさえすればいいのです。それがツイッターだろうが、フェイスブックだろうが、ユーストリームだろうが、何でもいいのです。そのなかで広告に対する評価をしていただければいい。別にiphoneでもiPadでもOKですよ。それをすぐに、アップルとグーグルが競っているなどと言われます。そちらの方が記事として面白いのでしょうね。
【聞き手:大根田 康介】
<プロフィール>
村上憲郎氏
1947年大分県佐伯市生まれ。70年京都大学工学部卒業。卒業後日立電子に入社。78年日本DECに転職、86年から5年間米国本社勤務、帰国後92年に同社取締役に就任。94年に米インフォミックス副社長兼日本法人社長。98年にノーザンテレコムジャパン(現ノーテルネットワーク)社長。2001年にドーセントジャパンを設立し、社長に就任。03年より米グーグル副社長兼日本法人社長に就任。09年より現職。著書に『村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける』、『村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則』がある。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら