成功体験は捨てよ 若者と新技術が切り拓く時代へ
―これから10年後、日本と中国の関係はどのようになっていると考えられますか。
村上 今、日本全体が大転換のなかにあると思います。そうなってきたときに考えなければならないのは、よく内需とか外需とかいう言い方をしますが、とくに九州の場合は中国がすぐそばにあるのですから、あそこを内需だと思えばいいのです。外需だと考えるから身構えるのでしょう。博多の先だったら、せいぜい久留米くらい、ちょっと行って長崎くらいだと思えばいい。
天津で商売してみようか、上海へ進出してみようか、上海のお客さんを九州に連れてこようか―こういう風に考えていけば、九州という点では、やはり中国とどう向き合うかということが大事だと思います。東京なんてどうでもいいではないですか。上海に支店を作ることの方がよほど重要ですよ、九州にとってはね。
長期的視点で一言だけ言えるのは、日本は中国に飲み込まれるということです。でも、それは別に悪いことでも何でもない。歴史を辿ると、いわゆる白村江の戦いで百済が滅び、唐が大きな力を持った。一方で、大化の改新を経て701年の大宝律令あたりで「日本」が確立されたのでしょうが、それは唐という巨大な新しい帝国に対してどう向き合うのかということだったと思います。しっかりと遣唐使を派遣しながら、学ぶべきことは学び、日本は日本としての独自の文化を作り育ててきたわけです。
そう考えると、いつも中国の影響にさらされていたわけじゃないですか。元寇しかり、文禄・慶長の役しかり、日清、日露戦争もどちらかと言えばアヘン戦争で負けた清国を反面教師として、ああなってはダメだと感じつつ欧米列強に対して構えていた。
その後は日中戦争などやらなくてもいいことをやってしまうわけだけれど、そうした長い歴史の中国との窓口は九州だったわけです。
【聞き手:大根田 康介】
<プロフィール>
村上憲郎氏
1947年大分県佐伯市生まれ。70年京都大学工学部卒業。卒業後日立電子に入社。78年日本DECに転職、86年から5年間米国本社勤務、帰国後92年に同社取締役に就任。94年に米インフォミックス副社長兼日本法人社長。98年にノーザンテレコムジャパン(現ノーテルネットワーク)社長。2001年にドーセントジャパンを設立し、社長に就任。03年より米グーグル副社長兼日本法人社長に就任。09年より現職。著書に『村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける』、『村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則』がある。
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