<最終のビジネスチェンジができず>
団塊の世代は最後の勝ち残りである。年金生活でどうにか最低生活が保障される世代だ。30代、40代の後輩世代には本当に「申しわけない」と思っている。「何の社会的貢献もしないまま年金暮らしで怠惰な余生を送らせていただくことを感謝するしかない。後輩の皆さんに老後の不安を与えてすみませんとしか言いようがありません」。いまや団塊の世代のサラリーマンOBの大半は、年金引退生活に移行完了している。
ところがだ。40歳前後から独立し、事業を起こした同年輩の中小企業経営者の8割は、ビジネス人生決算をつつがなく終えられない状態にある。前シリーズに登場した『ぺー・ジェー・セー・デー』(Pe社)は第3者破産申し立てに屈した。オーナーの野田憲男氏は「70歳まで事業を完遂して再起する」と決意している。このケースの場合には必ず再建してくれるであろう。何故ならばPe社は時代を読んだネット通販を11年間、展開をしてきた。一敗地まみれたといえど年商15億円規模の実績を築いていることは心強い。
残念なことだが、多数の経営者は20年前に創業したときのビジネスモデルに引き回されている。激変時代に沿ったニュービジネスの構築に悪戦苦闘している現状だ。最初の事業を起こした際の勢いついたビジネスが陳腐になった。わかっているけれど脱皮できずにいる。一方では脱皮するために策を講じたが失敗に終わり、手持ち資金を枯渇させ倒産寸前の四苦八苦に喘いでいるのが実情である。
同年輩の事業を立ち上げた彼らとは親密感を抱いてきた。さらには同志的な結合で経営勉強会を行なってきた者としては彼らの惨状を目の当たりにして悲しい限りである。優勝劣敗は企業戦争の冷酷な一面だからしょうがない。ただ「『商売の原点』に戻り『理念の旗印』を鮮明に焼き直せば企業の元気さは取り戻せた」と考えている。しかし、現実の資金繰りに追いまくられると方向転換は容易ではない。「あー、また明日の支払いが待っている」とうなされるとそれどころではなくなる。サラリーマンで引退した連中は可もなく不可もなくの老後余生を送っている。彼らからは「独立した奴らはもの好きなものよ。悪戦苦闘の人生をいつまで楽しんでいるかな」と皮肉られる始末だ。リスクを背負って起業した者どもが「アホ」呼ばわりされるのはしゃくにさわる。
<請負業者も別次元の世界に飛翔できず>
『高松組一周忌シリーズ』の取材においても、あらためて『人間、企業組織をチェンジするのは至難の業』であることを再認識した。「請負では先行き・見通しは暗い。このままの状態を放置すれば近い将来、高松組の二の舞になる」ことを頭で理解していても方向転換を渋る本能的反応が生じる。倒産覚悟をしているわけでもないのだ。倒産になれば右往左往するのは目に見えている。
「自分の会社を潰してはならない」という恐怖心を抱けば、必死で次の策を講じる努力をするはずだが―。経営者の大半は「請負業をするしか他に思いつかない」と開き直りの発言をする。戦線離脱というか戦線放棄の印象を受けてしまう。請負業の方々はまずは行政に物を申すべきだ。弊社はその水先案内人として9月に九州の建設業界の関係者を集めて総決起大会を開く予定をしている。まず業界全体で意見表示をする習慣を定着させることから始めよう!
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