<いざ出陣>
我が社の'ジャイアン'川上課長がやさしく語りかけるように(目は笑ってなかった・・・)損益分岐点について説明し・・・川上課長の話の内容をざーっとかいつまんで言うと、「損益分岐点とは商品の粗利益から人件費等様々な経費を引いた利益のプラスとマイナスの分かれ目」のことなんだということで(かなりかいつまみました)、今回の出張の場合、さらに出張費旅費や配送費を余分にみなければならない等々、川上課長はご親切にもその場で概算の採算を計算してくれ(汗)「そうだな山笠クン!ざーっと見積もって○○ケースは売らないと話になんないな・・・ん? どうよ? 勿論返品なしで事前納品前提なら出張認めるよ」と、明らかに無理っぽい数字と条件を出してきました。まだまだ駆け出し怖いもの知らずの博多っ子純情セールスの小生は、「ハッハイ分りました早速交渉して参ります」と改めてフランケン柳川部長のもとに商談に行ったのであります。
さてフランケン柳川部長と商談室で対峙し、緊張の面持ちで(恐る恐る)返品なしで一括で事前に納品して欲しい旨を伝えると、あっさり「あっそう。ちょっと多い・・・返品なしなんて何考えてんの君の会社は?! でも山笠君、どうせ今月X社長のところで同行販売するんでしょ? よく同行日程取れたね。まぁいっか。頑張ってよ! それとさぁ、あんまり早く納品するなよ、後は宜しくっ」ていうことで、ものの数分で商談は終了!
後は展示会の時どこのホテルに泊まるだの、どこに飲みに行くだの、X社長は女好きだの、フニャフニャとノー天気に話しかけてきたのでした。まさに拍子抜けもんでした(後が怖い・・・・・・)。交渉が上手くいった実感のないまま会社に戻り、川上課長に報告。一瞬目をひんむいてこちらをひと睨み、あとはいつもの自信たっぷりの口調に戻り、「山笠クン返品なしって本当か~? いい加減な商談してるんじゃないの? だから君のチームはだめなんだよ。こんなの半分以上返ってくるぞぉ~」と'性悪説'に立った厳しい一言を浴びせられましたが、「まぁ今回だけはいいや、勉強のつもりで責任もって売って来い」と、なんとか出張許可が下りたのであります。その後もぶつぶつとお小言は言われつつ・・・・・・。
<地獄の三丁目>
X社長の会社の同行販売も独特でありました。月曜~金曜が同行販売。土曜の午前中に販売数量の集計をして最終納品伝票を切るというパターンなんですが、同行販売時は、朝はゆっくり来いとの指示で毎日11時位にX社長の会社に入る様にしたのです。
11時に入っても、実際同行販売がスタートするのは昼過ぎの14時頃。初日の月曜日は内心「マジかよぉ~」とハラハラしました。しかも初日同行の青田部長はいきなり銀行に行き、「山笠君ちよっと待っといてな、養育費振り込んでくるから」って、どうやらバツイチ。 しかしながらここからが地獄の三丁目の始まり始まり。
実質15時同行販売開始から約20件ほどドラッグ(当時は薬局)を中心に廻り、終了が夜中の12時過ぎ、しかも川沿いの国道で車から降ろされ、「山笠君の宿泊してるとこからタクシーで2,000円位だから」と、いつタクシーが来るとも知れない暗い夜道に放り出されたのです。
2日目は古典的チンピラ系キャラのパンチさん。身長は推定160センチ。話してみると奥さんの尻にひかれっぱなし・・・営業もお客さんの尻にひかれっぱなし・・・X社長にビビリッぱなしの仕事は外見と正反対でスペシャルに頼りない。2件目から早くも小生が主導権を握る状態。ある意味愛すべきキャラでした(笑)。
3日目~4日目は泊まりで青田部長。初日の最後のドラッグストアは夜中の12時過ぎから商談。
「ドラッグストアもな、これからはいかに売れない健康食品をようけ売るかが勝負や! うちとこの言う通りにしたら売れるから。そうすればうちがライバルの競合店のお店はクチャクチャにしたるから」が商談時の口癖で、「山笠君とこは大会社やからな、そこらのパッチもんの商品と違うから扱わんといかん」と半ば強制的にほぼ100%の確立で売っていただきました。今考えるとみんななんだかんだ言って良く働いたもんです。青田部長は鳥目? との事で、夜になると小生が車を運転させられました。明らかに積載オーバーの走行距離20万キロに届こうかというワゴン車に真っ暗い山道を運転させられ、あの怖さは今でも忘れる事の出来ない思い出です。あまりにハンドルが取られるので一心不乱にハンドルを握りしめたものです。
<売上目標の200%達成!>
5日目は哀愁の関西弁の吉本さん。はなから「僕の同行は付録みたいなもんやさかい」と、謙遜ともボヤキとも取れない哀愁のネガティブ発言の数々・・・このパターンはもしかして山笠ワールドである'個人情報'を引き出す天才? の小生の出番? と勝手に内心盛り上がってしまい、この日は売る事より吉本さんをいじる事に楽しみを見出してしまいました。同行終了時には、吉本さんの半生を小生の頭の中で勝手にデフォルメさせたストーリーができあがってしまっていたのでした(吉本さんごめんなさい)。
さて集計の日の土曜。X社長はめずらしく優しい目で「数字は少し目標より足らんかったみたいやけど、来月の展示会までうちの営業が山笠君に恥をかかせんように数字つくるからのぉ、とりあえず山笠君の言う通りの数量引き取ったるわ。そやろパンチ! 少しは売ってみろや~! オトコをみせてみい!」と矛先はいきなりパンチさんに・・・(笑)。パンチさんはひきつった表情を小生に投げかけてきた。その瞬間吉本さんは何かを語り掛けるように小生をチラ見しておりました。
「哀愁ばっかりじゃなく少しは売ってみろや~」と何故か心の中で吉本さんに罵声を浴びせてしまった小生でした・・・(汗)。
翌月の展示会も含め、結果的には川上課長の立てた目標数値の2倍(勿論返品なし)以上を達成出来たのでした。
その後年1回同行販売が恒例となったのは言うまでもありません。
<プロフィール>
山笠太郎(ヤマガサ タロウ)
1960年生まれ。三無主義全盛の中、怠惰な学生生活を5年過ごした後、大手食品メーカーにもぐり込む。社内では、山笠ワールドと言われる独特の営業感で今日に至る。博多山笠は日本一の祭りであると信じて疑わない。
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