博多区上牟田に近代的なビルがある。(株)竹田商会の本社だ。1964年の創業以来、鉄スクラップと鋼材を取り扱ってきた同社。前ページにも書いたとおり、鉄スクラップは価格変動が非常に大きく、商材としては難しいと評さざるを得ない。その鉄で業容を拡大してきた同社の歴史を紐解いてみたいと思う。
<堅実経営が成長に結びつく>
価格変動の厳しい鉄スクラップを取り扱う福岡のトップ企業のひとつが(株)竹田商会だ。
同社は1964年、福岡市博多区上牟田で竹田奉正現代表によって個人創業された。71年には事業の拡張にともなって博多区金隈に用地を取得し、370坪の事務所兼スクラップヤード(金属スクラップ置き場)を整備する。79年には1,080坪に拡張し、翌80年に資本金1,000万円で法人化、89年に宇美町、96年に北九州若松区、05年に東浜、06年に箱崎の用地を取得し、それぞれ工場機能やスクラップヤード機能を付置した。06年には資本金を3,000万円に増資、09年に現在の本社へ移転している。07年の売上高は100億円を突破し、現在、従業員数80名を数える企業へと成長を遂げた。
福岡の金属リサイクル業のなかでは後発であるにもかかわらず、業績が堅実に成長している点が目を引く。この点について竹田社長は次のようにコメントしている。
「効率化に重点を置き、ボールペン一本にいたるまで私が目を通しています。できる限り経費を減らす努力を重ねてまいりました。加えて、私はできる限り現場に足を運ぶようにしています。社長のあり方いかんで社の業績は左右されると思います」。
<日本有数の処理能力を持つ設備>
同社は施設の規模、設備も九州トップクラスを誇る。現在、工場機能がある施設が北九州支店、東浜工場、太宰府工場の3カ所、スクラップヤードが箱崎に1カ所、鋼材倉庫が宇美町に1カ所となっている。
工場ではそれぞれ、搬入された金属スクラップを選別、破砕し、高炉・電炉メーカーへと送られる。同社で一番規模の大きい北九州支店を見てみよう。敷地面積2万1,500m2のなかに1,600トンギロチンが1機、自走式ハイキャブ(スクラップを掴んで移動させるための自走式の重機。大きなショベルカーの先端にアタッチメントを付けてさまざまな役割を持たせる)、ホイールローダー(ブルドーザー)など重機7台、クラッシャー1台となっている。特筆すべきはクラッシャープラント。ギロチンで切断された金属スクラップをさらに細かく破砕するためのプラントである。竹田商会が使っているのは、メッツオ・ミネラルズ社製(本社スウェーデン・ドイツ製)で世界トップクラスの高い処理能力を持つ。このクラッシャーは、九州では同社が初めての導入である。処理能力を高めて、必要なものを必要なときに供給できる体制が整えられているのだ。
北九州支店のほかに東浜工場、箱崎ストックヤード、太宰府工場があり、それぞれが有機的につながりあってスクラップという難しい商材で一定の成功をおさめることに成功している。
余談ではあるが、同社の工場やヤードはどこも、極めてきれいに整理整頓されているという特徴がある。スクラップを取り扱うというと、場内にさまざまなものが散乱しているイメージがあるが、同社の工場はまったく違うのだ。敷地内はアスファルト舗装がなされており、自走式の重機が充分に動ける幅が確保されている。そして、そのアスファルトのうえには金属クズはもちろん、ゴミのひとつも落ちていない。もしも何かが落ちていたなら、タイヤのパンクや事故、怪我を招いてしまうかも知れない。それを事前に防ぐためにも、整理整頓を入念にやっているのだという。好調な業績の裏には、このような普段からの心がけがある。
(株)竹田商会
代 表:竹田 奉正
所在地:福岡市博多区上牟田1-17-21
創 業:1964年
設 立:1980年
年 商:85億円(今期予想)
従業員数:約80名
【柳 茂嘉】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら