キユーピー(株)(東京都渋谷区、鈴木豊社長)は、ヒアルロン酸が、関節痛を軽減する物質の分泌を促すことを解明したことから、ヒアルロン酸原料の販売に力を入れる。日本整形外科学会で発表された調査データによると、日本における変形性膝関節症の患者数は、痛みを伴う例が約700万人、エックス線上で確認される例は約2,400万人と推計されており、「医学的な治療以外にも食を通じて症状を軽減するという選択肢が広がりつつある」(同社)ことから、サプリメント用途の原料供給を展開する。
6月6日から京都で行われた「第8回ヒアルロン酸国際カンファレンス」で発表した同社の研究内容は、18週齢の膝関節炎を発症するモデルマウスに、食品用ヒアルロン酸(キユーピー(株)製「ヒアベスト(R)(J)」)200mg/kg・日を4週間与え、ヒアルロン酸が体のどの部位に作用しているのか、また、遺伝子およびタンパク質の発現にどのような影響を与えているのかを調べた。
試験は、(1)作用部位、(2)痛みの抑制につながるタンパク質(SOCS3)の発現量、(3)痛みの抑制につながる遺伝子(IL-10)の発現量――について確認。結果、(1)については、モデルマウスの腸管組織を二重染色した結果、TLR4(高分子を認識する受容体のひとつ。TLR4に高分子が結合すると様々な生体調節情報が発信されるといわれている)染色部位とヒアルロン酸の染色部位が一致し、ヒアルロン酸は腸管内でTLR4と結合していることが分かった(図1~3参照)。 (2)についてはHT29細胞(ヒト大腸由来)を用いたRT-PCR法により、腸管組織内でSOCS3(抗炎症サイトカインの産生を促すタンパク質)の発現量が増加していることが分かった(図4参照)。また(3)については、モデルマウスの血清を分析した結果、抗炎症サイトカイン(炎症の抑制に関与している物質)IL-10の発現量が増加していることを確認した(図5参照)。
各試験によりモデルマウスの腸管組織を二重染色した結果、TLR4の染色部位とヒアルロン酸の染色部位が一致し、ヒアルロン酸は腸管内でTLR4と結合していることがわかった。このことからヒアルロン酸が腸管内の受容体と結合することで、炎症の抑制にかかわる物質の分泌を促すことがわかり、関節の痛みを軽減するメカニズムが示唆された。
同社では、ヒアルロン酸の機能性についてさまざまな研究を進めており、これまでにヒアルロン酸摂取で膝の痛みが軽減することを示唆する研究結果を得ている。
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