<調査会社も所詮、評論家の域を出られず>
一般企業信用調査・情報会社の業績のピークは平成初頭のバブル期まであった。そこから20年間、どの企業も業績は下り坂である。筆者の前職場であった会社も下降線をたどっている。何故、業績が下り坂になったか。調査受件は毎年、減ってきた。そして近年、情報誌もお付き合い購読が急減してきている。だからどこも経営内容は大変だ。与信管理の重要性は叫ばれながらその市場は先細りするばかりである。
何故か。(1)プロとしての情報ブランド・虚像のメッキが剥げたということがあげられる。ユーザーが所詮、評論家的な切り口に辟易し始めた。(2)信用調査を重視する市場はあるが、このニーズに対応できるレポートを提供できなくなってきた。与信管理に耐えられる水準が保たれなくなった。後述するが調査会社はB/S入手と不動産入手だけしか頼まれなくなってきたのである。(3)メッキが剥げたと指摘したが、舐められてきたと同義語で良い。お客の志向を掴めなくなってきたら原点に戻るしかない。
原点に戻るとは、理念の旗を立て直すことだ。お客への役割を明確にすることである。次のような分岐点になるであろう。(1)得意先の与信管理業務を引き受ける。これは職人芸的な小規模な事業しか展開できない。(2)事前情報を含めた情報サービスに特化する。これは10名規模程度の経営が限度であろう。(3)圧倒的な経営情報の発信を軸にしてユーザーの悩みにいろいろと立ち向かっていき解決していく役割を明確にする。こうなれば100名規模の事業展開は可能である。これが弊社の挑戦していく道だ。
<二大巨頭も次の策には苦慮>
企業信用調査業界の巨頭は、ご存じの帝国データバンクと東京商工リサーチである。1980年頃からこの両巨頭は舵取りのチェンジを図ってきた。つまり企業情報データ・サービスである。帝国データバンクは、データベース化に1,000億円を超える投資を行なった。そこで初めて企業データ売りの市場を拡大していった。そして、日経新聞など異次元の業種とタイアップして驚異的な売上の伸びを示した。潜在市場を拡大させたのである。この動きにどうにか追走できたのは東京商工リサーチのみであった。
ここまでは企業のデータ売りで栄華を誇ってきた両巨頭である。だが次の打つ手はどうするのか。企業情報サービスでなくデータ・サービス業に徹したために(なり下がったために)社員のレベルはプロの情報マンの域からはるかに下がってしまった。現在の情報収集伝書鳩(アンカーマン)集団を創り変えるのは革命を起こすのと同じようにエネルギーがいる。口達者な評論家集団は大海に漕ぎだしたら木偶の坊でしかないことが一目瞭然となる。高収益を誇った帝国データバンクがどういう理念の旗を揚げ替えるのか注目するところだ。断定できることは「情報のプロ集団」という自己規定はしないということである。両巨頭以外には企業として成立する基盤は皆無であろう。
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