成功体験は捨てよ 若者と新技術が切り拓く時代へ
―無料で使える有用なアプリケーションなどがたくさんあるにも関わらず、私のいる福岡の企業などでは、まだそれほど有効活用されていないように感じます。
村上 それは福岡だけではありませんよ。やはり電子政府などは昔からやろうとしても上手くいきません。あるいは「医療や教育にもっとIT活用を」と言われますが、それもなかなか進まない。では、民間企業のIT武装というものが本当に進んでいるかと言えば、そうでもない。東京でも同じだと思います。進んでいないのは全国的にではないでしょうか。
要するに、今まだ始まったばかりだということでしょう。iPadがすばらしいのは、マルチタッチでプレゼンテーション力があることだと思います。ITリテラシー的に言ってもボタンが少ないから、ある程度慣れてしまえば、逆にパソコンが分かりませんという人の方が使いやすいのかも知れません。
だから、iPadに象徴されるようなタッチスクリーンの使いやすいタブレット型が時代を変えると思います。
クラウドコンピューティングも含め、あれがきっとシンクライアントの典型です。とくに最前線の営業マンとか店頭で接客する店員さんにとって非常に使い勝手のいいものですし、企業としての情報武装という部分で、ものの考え方を一気に変えてくれるレバレッジ効果があるでしょう。
これは、iPadに対抗するグーグルのChromeOSタブレットが云々ということではなく、ああいうものがドンドン増える時代になると思います。iPadは技術的にはまだまだです。機能やビジュアルなど、もっとさまざまな広がりを見せると思いますよ。
私がいつも言うのは、これからはiphone、iPadが切り拓いた新しい時代、あるいは切り拓きつつある新しい時代だということです。
―過去にはWindows95が出たとき、日本のパソコンの世界をガラリと変えてしまいました。iPadはそれくらいのインパクトがありますか。
村上 そういう感じですし、むしろそれ以上のような気がします。社内システムの講習会をやらないとiPadを使えないオジサンたちはもう放っておいて、要するにマニュアルを読まなくてもさっとiPadを使えるファミコン世代向けのものが出てきたということではないでしょうか。
【聞き手:大根田 康介】
<プロフィール>
村上憲郎氏
1947年大分県佐伯市生まれ。70年京都大学工学部卒業。卒業後日立電子に入社。78年日本DECに転職、86年から5年間米国本社勤務、帰国後92年に同社取締役に就任。94年に米インフォミックス副社長兼日本法人社長。98年にノーザンテレコムジャパン(現ノーテルネットワーク)社長。2001年にドーセントジャパンを設立し、社長に就任。03年より米グーグル副社長兼日本法人社長に就任。09年より現職。著書に『村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける』、『村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則』がある。
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