菅氏の小沢離れが、マスコミの「傀儡」批判を封じた形だ。その裏に、小沢氏のしたたかな計算があるようだ。
3日夜、民主党・小沢グループの1回生らが、党代表選挙で樽床伸二衆院環境委員長を支持することを決めた。小沢グループ全体としては「自主投票」が決まる中、異例の展開となった。
民主党代表選には、3日までに菅直人副総理・財務相と樽床氏の2人が立候補を表明していたが、同日午後7時から港区赤坂の一角にある会場に集まった小沢グループの1回生議員らは、樽床氏支持を決めた。参集した同グループの議員らは、ことの展開に呆れるばかり。樽床氏支持を訴える声にまばらな拍手で応えたという。
というのも、昨日集められた同グループの議員らには、事前に「第3の候補擁立」が伝えられていたという。しかし、会場には樽床氏と同氏を推す議員が現れ反対意見を述べる間もなく「樽床支持」が決まったとされる。グループの中からは「どうなっているんだ」という囁きが漏れた。樽床氏支持に共感を抱く議員は少なかったということだ。
あえて勝ち目の少ない樽床氏支援を黙認した小沢氏の真意はどこにあるのだろう。
小沢氏周辺は田中真紀子氏や原口一博総務相らに出馬を打診していた。小沢氏が「菅支持」で動けば、「傀儡政権」との批判がつきまとうことになる。参院選を控え支持率回復にもマイナスだ。菅氏は表面上、小沢氏と距離を置く姿勢を鮮明にするなど、外向けには「脱・小沢」を演出して見せた。
小沢氏周辺は、断られるのを承知で第3の候補者を模索し、出馬を決めた樽床氏には1回生らの票をあてがった。「傀儡」批判を封じ、民主党の支持率を上げるにはこの方法しかないと判断した可能性がある。高等戦術である。事実、小沢グループのある議員は、「『樽床ではなく第3の候補を』と聞いていた。(小沢さんは)こんな訳の分からないようなことをする人ではない」といぶかしがる。敵を騙すにはまず味方から、ということなのかもしれない。
いまのところ、小沢氏の高等戦術は功を奏し、きょうの新聞各紙の世論調査では、民主党が軒並み支持率を回復基調に乗せた。
小沢氏が本当の勝負に出るのは、参院選後の9月、民主党代表選本番においてである。
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