福岡市が約1億円近い公費を投入し、市役所西口の広場に敷設した人工芝への疑問が広がっている。
第一の問題は、市役所前広場を利用したヒートアイランド対策が、なぜ「人工芝」敷設に決まったのかということだ。
この点について、担当である市環境局温暖化対策課は「人工芝採用の方針を決定した折の決済文書等はない」と認めた上で、「予算要求文書が決済文書にあたる」と強弁する。
確かに、平成20年11月に作成された市役所内部の予算要求文書「歳出予算見積書」(参照)では、ヒートアイランド対策費として約6,700万円余りを要求している。
事業概要としては《平成20年度に実施した実証実験の結果を踏まえ、保水性人工芝によるクールスポット創出を図るもの》と明記し、その理由として《平成20年度に実施したヒートアイランド対策実証実験においては、利用した市民へのアンケート、イベント主催者へのアンケート、イベントへの耐性等の観点から、保水性人工芝に優位性が認められた》とする。
しかし、これはおかしい。同課が作成した実証実験の結果概要にあるサンプル数293人の「利用者を対象としたアンケート結果」からは、保水性人工芝が優位であるとの結果は得られていない。《保水性人工芝、天然芝とも概ね好評で、約6~8割の人が『涼しく感じる』、約1~2割の人が『涼しくは感じないが、見た目や感触がよい』と回答しています》とあるだけで、天然芝より人工芝の方の評判がよいというわけではない。さらに、天然芝、人工芝ごとの棒グラフでは、天然芝を『涼しく感じる』と回答した人のほうが40人も多い。
この結果から「人工芝優位」との結論を導き出すには無理がある。
これまで報じてきたとおり、実証実験の結果は「天然芝」の優位を示すものばかりで、人工芝が乾燥した場合は表面温度が上がる、という欠点も明記されていた。
実証実験の結果から「人工芝」導入を決めたとする市側の説明には、これまでのところ何の根拠もない。
市内部の検討過程や決済文書が不存在である以上、「はじめに人工芝ありき」だった可能性が高いのである。
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