上海は、中国で『最も高齢化が進んでいる大都市』です。いかにして老後を美しく輝く夕日のように送れるか、近年、ますます社会各方面で注目や関心を浴びています。そのなかでも、高齢者が勉強に励む『老年大学』(中国における高齢者教育事業の一環)への関心は高まる一方。夢中になっているお年寄りの姿が顕著になっています。
行列ができる入学申請時
6月中旬のある日、『上海老年大学』新学期前の入学申請現場では、午前中だけで約1,600人のお年寄りが長蛇の列を作りました。何人かの老人は、申し込み人数に制限があると聞き、早朝午前2時、3時頃に並び始めたそうです。ちなみに上海の『老年大学』は、普通の大学と違い、進学試験成績ではなく先着順で入学を決めることになっています。
人気の理由・高齢者のニーズ
『老年大学』ブームの背景には、以下の3つのニーズが考えられます。
(1)定年後の空白を埋める
定年退職後をどう過ごすか。特に男性の人は、在職時、毎日仕事に追われ、疲れやストレスが蓄積します。そんな生活リズムにも慣れてしまい、一旦暇になると、退屈をもてあまし、空虚感に襲われてしまう。そこで『老年大学』に進学し、日々の暮らしを充実させようとしています。
呉さんは、『老年大学』で書道を習うことを選択しました。毎日放課後、自宅で3時間、法帖に模して毛筆を握って習字しています。同時に、書道への理解を深めるため、先生に教わりながら古典文学を読んでいます。今では、彼の字の上手さが評判となり、近所のコミュニティーから頼まれて「対聯」を書いています。『老年大学』に通い始めてからの呉さんは、まるで生まれ変わったかのように精神面もすっきりし、積極的に社会とのつながりを再構築しています。
(2)青春の空白を埋める
60代から80代の高齢者は、戦争や文化大革命の影響を受け、勉学すべき年頃に勉強ができませんでした。その後も、家庭や日常生活に圧迫され、勉強の機会がなかなか見つからなかった。今の年齢になって、ようやく子供が独立し、好きなことがやれるほどの余裕ができました。進学のためでもない、出世のためでもない、ただもう一度、青春の活力を喚起し、生命に火をつけようとがむしゃらに勉強しています。
『老年大学』創立時に入学した秦さんは、ふたつの博士課程を修了できるほど、20以上のカリキュラムを終えました。にもかかわらず、まだ一生懸命学んでいます。大学の看板生徒にもなりました。彼女の影響で、家庭内は勉学に打ち込む雰囲気が濃く、孫も勉強家になっているそうです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら