上海は、中国で『最も高齢化が進んでいる大都市』です。いかにして老後を美しく輝く夕日のように送れるか、近年、ますます社会各方面で注目や関心を浴びています。そのなかでも、高齢者が勉強に励む『老年大学』への関心は高まる一方。夢中になっているお年寄りの姿が顕著になっています。
人気の理由・高齢者のニーズ(つづき)
(3)人生の空白を埋める
年が経つに伴い、いろんな事情があるとはいえ、親しい人が自分より先にこの世を去るのは残酷な現実です。『老年大学』における学習によって、再び人生の生きがいを見出そうとする高齢者も少なくはありません。「信念と目標があればこそ、どんな困難でも乗り越えられる」という一文が、生徒の座右の銘になっています。
現在86歳の楡さんは、18年前、夫とふたりの息子が亡くなりました。その苦痛から立ち直ることができたのは、『老年大学』に踏み入れてからです。十何年の勉強で、人生の春を再度切り開きました。「今は寂しさを感じることもありません。習うべきことがいっぱいあり、いつも時間が足りない気がしています」と、彼女は感想を述べています。
『老年大学』がお年寄りに新たな舞台を作り、勉強することで彼たちや彼女たちの人生を充実させています。また、そのなかから社会奉仕を行なう人が増えており、より良い世界の構築につながっています。
今後の課題
『老年大学』ブームの裏で、供給と需要の矛盾が明らかになっています。
上海の市区町各レベルには、老年教育機関が278カ所あるほか、住宅地にも4,000以上の教室があり、就学希望者を受け入れる仕組みが作られました。しかし、先生や設備の水準に差があるため、多くの老人は市レベルの大学にしか行きません。さらに、勉強にあまりにも熱心になり、卒業したくないという生徒も増えています。そのため、市の『老年大学』がいくら生徒たちの熱い気持ちを受けたくても、受けられる人数に余裕がありません。「就学難」という厳しい現実があるのです。
その解決策として近年、補助措置が次々に採られています。ひとつは、市の『老年大学』が町と連携し、町で教室を設けて優秀な先生を派遣する、いわゆる出前授業です。もうひとつ、政府は上海の各大学に老年教育を行なうよう呼びかけ、受け入れ先を増やしています。2009年までに上海9カ所の大学が計397組のクラスを作り上げました。
筆者としては、今後、『老年大学』が「上海中長期教育」における終身教育の一環として更なる発展を遂げることに期待しています。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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