中国個人観光客向けの規制緩和について。
<残された課題>
(1)個人が日本へ旅行する際、ビザ申請や飛行機チケット、ホテルの予約などを、総領事館から指定された旅行社に任せなければいけない。つまり、旅行社を通さず、個人が直接、総領事館へビザ申請を提出することが現時点において受けられない。
(2)年収要件が6万人民元(約80万円)まで下げられる一方で、「ある程度の職業地位」が必要とされる。実際に、大規模国営企業や上場企業、日系企業の正社員ならビザ申請を受けるが、一般の民間企業の職員は拒否されるという事例があったという。
(3)ビザ申請の目的は観光限定。旅行のついでに友人や親族への訪問が許されていない。
(4)団体旅行に似て、事前に個人旅行スケジュールを立て、ホテルやチケットまで決めておくことが要求される。また、そのスケジュールを勝手に変更してはいけない。
(5)日本各地の人気のある「民宿」や「温泉ホテル」に泊まりたくても、取り扱う旅行会社がお得意先のホテルやビジネスホテルの範囲外であれば宿泊できない。
<今後の市場変化>
(1)個人観光客向けのビザ発給が緩和されることで、団体旅行が振興される。同時に、個別で少人数の来日が倍増することを見込まれる。主に、短距離海外旅行の新しい選択肢として、中国の中産階級や若者がショッピングやレジャーの目的で日本に訪れる。と業界の人が分析。
(2)東京や大阪中心の本州ツアーだけではなく、九州もスポットを当てられるようになり、消費者の新たな動きが見られるようになった。実際に、上海において「長崎―福岡―ハウステンボス・レジャーツアー」、「鹿児島―福岡―沖縄クルーズ船ツアー」の人気が高まっている。
<韓国からの競争>
日本の新政策に追随するように、韓国政府は、さらに中国人観光客を呼び込むことを目的として、7月2日、ビザ発給における規制緩和の草案を発表しました。そのなかで注目すべきは以下の2点です。
(1)小中学校の先生、名門大学卒業者、専門家、公務員や年金生活者など、安定した仕事を持つ人を優遇し、1年間のマルチビザを発給する。
(2)韓国経由の中国人に対し、2重ビザを発給する。あるいは、もう1回韓国に来るように便宜を図る。
草案公表後、韓国政府は、関連する官公庁や観光部署、中国の旅行社を集め、意見の聞き取りを実施しました。早ければ、7月中旬から実行に移す予定と報道されています。
また、韓国側の統計によると、韓国を訪れる中国人観光客は、2005年の58.5万人から09年の121.2万人まで増加しています。マスメディアの予測では、今回のビザ発給緩和が実行されれば、あと20%の伸び率が見込まれ、その時、中国が韓国にとって第1位の旅行客市場になると試算されています。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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