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【トップインタビュー】早稲田大学大学院教授 野口悠紀雄氏(6)~世界では「その他」の日本
直撃インタビュー
2010年7月10日 08:00

根拠なき楽観論に振り回されるな 日本に求められる産業構造の転換

 ―現在、野口先生は早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授ですが、ここにはどのような生徒たちが集まっていますか。

 野口 少なくとも、仕事をしながら勉強の時間をとって、しかも高い授業料を払って来ているわけですから、現状のままで良いとは思っていないのは事実でしょう。そういう意味では、日本の未来を拓くひとつの核になり得る人たちですね。

 大学院の2年間が終わるまでに、学費だけで約300万円かかります。それに対して、政府からの支援策は何もありません。多少の奨学金は学内にありますが、少なくとも公的にはない。その人たちは働いており所得があるわけですから、所得税上の所得控除や税額控除という措置があり得るわけです。もしそうしたことがあれば、非常に大きな助けになりますし、今後は仕事をしながら学ぶ人たちが増える可能性もあります。

 ところが日本政府は、自民党政権はもちろん、民主党政権になってもそんなことを考えている人はまるっきりいません。アメリカでは、大学の授業料に対する所得税上の措置がありました。オバマ大統領はそれをさらに拡充しました。アメリカ人は生涯勉強しなくてはいけないという考えによるのです。

早稲田大学大学院教授 野口悠紀雄氏 教育のような特定の分野、特定の産業にしぼったものではなく、一般的に人間の能力を高める措置は、本当は政府がやるべき重要なことです。成長政策という政治家はいますが、大学院の授業料の支援のことを言っている人は1人もいません。

 仮に300万円のうち100万円を支援してくれたら、たいへん大きいと思います。それを1万人の学生を対象にするとします。それでいくら必要かというと、100億円です。子ども手当てには2兆円を超える予算が使われているわけです。それを考えると、200分の1の費用でできるのです。

 これは、財源の問題ではありません。やる気があるかどうか、あるいはそういうことが必要だという意識があるかどうかです。これを誰も言わないということは、日本の現状を象徴しています。成長が必要だと言いながら、成長のための最も重要なことを何もやっていないのです。

 ―個々人では意識が高い人もいるのでしょうが、それがひとつにまとまっていない感はあります。

 野口 多くの人がそうなのかどうかは分かりません。ただ、意欲に燃えた人がいることは事実です。ゼロにはなっていない。しかし、マクロ的な統計で見る限り、アメリカへの留学生の数字が示しているように、日本は世界のなかでは「その他」なのです。とくに注目すべきは韓国ですね。韓国の人口は中国の20分の1なのに、それでも留学生数はほとんど同じなのですから。

(つづく)

【大根田康介】

<プロフィール>
野口 悠紀雄野口 悠紀雄(のぐち ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。近著に『経済危機のルーツ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』(東洋経済新報社、 2010年4月)、『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』(ダイヤモンド社、 2010年5月)などがある。

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