<事業主の気ままさのはき違い>
弊社の社員のひとりが独立する。はなむけの言葉を送った。「事業主は誰からも束縛されない存在だ。自由気ままにやれる。ここを勘違いしてはあとから後悔するよ。自由奔放の果てに辻褄が合わなくなって自己破産する運命が待っているから。そうならないためには厳しい自己規律が必要だよ」と助言した。この1点を頭に叩き込み実行しなければ、事業経営が瞬く間に破綻するのは間違いない。
35年間、筆者は企業経営者の浮沈を目撃してきた。それらの企業倒産には、必ずと言っていいほど経営者の放漫な私生活がセットになっていた。事業主のレフトウイング(左側)には、好き放題、わがまま勝手の無限の領域がある。ライトウイング(右側)には厳しい自己規律ゾーンが横たわっている。どちらを選択しても自由だ。ただし、結果には、成功者か破産者かという「天国と地獄の差」がついてしまう。独立する社員の成功を願いたいが、安易な一面は一掃しなければ、前途は平坦ではない。厳しい時代の独立志向者には、まず自己節制が一番求められる。
<地元のデベ業界を信用失墜させた2社>
倒産はしたが、ディックスクロキの社長であった黒木透氏は精一杯の配当捻出に奔走した。追加弁済0.7%のところを5.159%に引き上げて7月末に配当し、1年8カ月で民事再生法の手続を完了する運びとなった。一部で黒木氏の中洲遊びへの批判もあったが、逃げ隠れせず無報酬で奔走したことで罪滅ぼしは許されるのではないか(また、批判のメールが殺到すると思うが...)。
一方で、実に情けない、無責任の極め付きとも言える例が(株)アクシア・ユニオンと(株)ビルドのマンション業者2社である。(株)アクシア・ユニオン(本社・福岡市博多区)は2009年11月に事業停止をした。梶祐代表は支払いもせずに雲隠れしたのである。あとで判明したことは親しい取引先には決済していたことだ。周囲では「梶氏は3億円持ち逃げしたのではないか」と囁かれていた。経営投げ出しに怒った債権者は第三者破産申し立てを行なった。現在、破産管財人の下で不正行為があったかどうか調査中である。最近では「梶氏は福岡に戻ってきて中洲で飲んでいるのではないか」というウワサも流れている。
(株)ビルドの場合も呆れる。同社の社長・野津原氏は、連鎖する大内田建設が必死で資金繰りに駆け廻っているときの29日に麻雀に明け暮れていたのである。30日の手形1.7億円の決済を放棄してヌクヌクしていたのだ。大内田建設は当然の如く1回目の不渡りを出した。
さらに驚くべき事実が露呈された。ビルドの行き詰まりの原因は、鹿児島市で発売したマンションの売れ行き不振であった。51戸の案件で1件しか契約できていなかったという、売り行き不振どころか「全滅」という実にお粗末な状態に陥っていたのだ。関係者は「野津原氏は6カ月前から戦意喪失していた」と証言している。事実がどうであれ、この2社の梶・野津原両経営者の行動により、「地元のデベは信用ならない」というレッテルが貼られることになった。
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