<厳しい取締りの副作用>
4月中旬から中央政府により実施された不動産業界への厳しい取締り。これによって、全国的に土地使用権の売却や物件の売買が急速に冷え込み、物件価格の猛上昇の勢いに何とか歯止めをかけることができました。その一方で、賃貸物件の家賃が急騰し、社会的な問題に発展、世間に騒ぎを引き起こしています。
中国国内の新聞報道によると、5月以来の2カ月間で、北京、上海、広州などの大都市において、一般的な家賃の上昇率が少なくとも10%に達しています。西部の西安市内(陕西省の県庁所在地)では、賃貸物件家賃が平均30~50%の値上げで、月額1,000人民元(約15,000円)以下の物件は皆無になると言われています。しかし、そのような状況でも、数多くの賃貸物件は入居済みです。
経済の法則からすれば、家賃上昇は近年の経済発展や国民の収入増加を反映していると言えます。賃貸市場において、供給よりも需要が上回り、しかも、より多くの人々が家賃の上昇を認めているからこそ、現状に至っていると考えられます。
しかしながら、今の時期、短期間で家賃が急騰していることについては、専門家によって分析が異なっています。
<仲介業者の罪>
物件価格の高騰において、デベロッパーがマスコミからの集中批判にさらされているように、賃貸業務を営む仲介業者が悪者として、責める声がどんどん増えています。
当然、家賃の上昇により、仲介業者が得る手数料も増えます。また、物件売買市場の不況を背景に、賃貸仲介収入が業者の生死存亡に関わるほど、これまで以上に業者から重視されるようになっています。
具体的には、家賃を吊り上げるために仲介業者が以下の手法を取ったと疑われています。
(1)家賃値上げ止む無しの世論作り
通常、物件売買より賃貸から得る利益は少ないため、業者はせいぜい月にふたつの市場分析を発表します。しかし、4月から5月にかけての2カ月間、北京市場において仲介業者は20回以上に渡って家賃上昇の予測レポートを発表しました。
それらの記事のなかには、いろんな家賃値上げの理由が挙げられています。
・6月から卒業・就職のシーズンになり、市場の新規需要がかなり増加する見込み。
・物件価格が依然として高い水準に止まっているため、価格の下落が期待・予想されていることから、物件購入意欲がある人も賃貸物件に待機している。そのことが、さらなる需要増に繋がり、家賃を上昇させている。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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