※賃貸物件の家賃急騰について専門家の分析(つづき)
<政府の"好意">
進捗する都市開発の一方で、中心部には昔の古い住宅がまだ一部残っています。一般的に、それらの住宅にはトイレや厨房がついていません。生活に必要な設備が不備なため、中心部でも家賃は安いのです。
しかし、マスコミは、地方から出稼ぎに来た人々が悪条件で生活していることを度々取り上げ、政府を批判しました。その後、これらの住宅の取り壊しが加速されたため、交通の便が良く、かつ家賃が安い賃貸住宅が激減し、結果、値上げに至りました。
北京市政府では「賃貸物件、ひとり当たりの面積は10m2以上」とする規定を作成中という話もあります。一方で、「借り手の同意がなければ、家主が勝手に値上げしてはいけない」ことを法律化すべきと提言している専門家もいます。
もし、規定が実現すれば家賃が勝手に値上げされる以上、低所得者が借りられる賃貸物件は確実に少なくなるでしょう。いくら広い住まいが良くても、収入の実情に見合ってなければ住むことはできません。
収入増の範囲を超えて無理にいい物件に住まわせることは、政府が面子を保つだけで、結局、借り手はより多くの家賃を支払うことになると指摘する有識者もいます。
<家賃急騰の恐ろしさ>
今まで「買えなければ、まず借りる」とは、都市に出稼ぎに来た若者への慰めでした。
しかし、家賃が上昇すれば、ひとりで借りることもできなくなります。実際に上海のような大都市では、何人かの若者が一緒に1軒のマンションを借り、部屋ごとで家賃を出し合うことが流行っています。やむを得ない選択でしょう。
もし、更に値上げすれば、滞在もできなくなり、都市からの移動を考慮することになります。都市の活力にとっては欠かせない構成要素である若者の流失こそ、家賃急騰がもたらす恐ろしい未来と言えます。この問題について、都市の経営者は、もっと真剣に考えなければいけません。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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