日本の建設産業は未曾有の危機を迎えている。高度経済成長とともに、世界でも屈指の投資規模を誇る巨大産業となったが、バブル経済崩壊以降は一転して急速な縮小に見舞われている。公共投資、民間投資ともにピーク時から半減する状況で、地方の建設業者は苦境に喘いでいる。
1980年代からの突出した建設投資は功罪両面を生み出した。癒着や談合の温床といったマイナスイメージばかりが語られるが、重層構造の業種特性から、一億総中流と言われた時代の一端を担ったことは間違いないだろう。とくに雇用の面で建設業界が果たした役割は大きい。
時代が変わり、国が公共投資を抑制する方針を打ち出したことは理解できる。時代の変化とともに新たな産業へシフトすることは、国益の観点からも必要なことだ。だがこの点において、国土交通省はあまりにも無策だった。その結果が、極端な需給ギャップを生み出し、ダンピング受注の連鎖へと繋がっている。現在、建設産業の利益率は全産業の平均を大きく下回っている。
2009年8月の衆院選で自民党から民主党への政権交代が起こった。この時の民主党のキャッチフレーズ「コンクリートから人へ」は、建設業界に多大なダメージを与えた。自民党との違いを象徴的に表す狙いだったのだろうが、マスコミの喧伝により、建設業界が諸悪の根源であるかのようなイメージを植えつけられてしまった。このフレーズに対する建設業界の反発は凄まじい。
これまで建設業界では、過去のマイナスイメージを払拭するべく、地域社会でのボランティア活動など社会貢献にも積極的に取り組んできた。宮崎県の口蹄疫問題で実際に作業に当たったのは各地区の建設業者だ。災害時の防災活動にも建設業者は積極的に取り組んできた。だがこうした活動が、マスコミを通じて報道されることは、ほとんどない。
たしかに「飛行機が飛ばない空港」はいらないし、人がこない公共施設も不要だろう。だが、こうした不要な公共工事と、地方の社会資本整備として必要な公共工事を同列に論じる今のマスコミの論調は、あまりにも乱暴で短絡的だ。縮小したとはいっても、建設産業は今なお日本の基幹産業である。建設産業の方向性が日本経済に与える影響も大きい。建設産業をどうするのか、今こそ真剣に議論する必要があるのではないか。
今回、建設サイトのオープンに際し、(社)全国建設業協会の九州ブロックにご協力をいただいた。九州・沖縄各県の建設業協会会長のインタビューを掲載するが、各会長から様々な問題提起がなされている。ネットIB建設サイトが建設新時代を切り拓くための一助になれば幸いである。
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