熊本県建設業協会 会長 橋口 光徳氏
建設業といえば公共事業、都市インフラ整備のイメージがある。たしかに目に見える建設業といえば道路をつくったり、橋をかけたりすることだ。けれども、その裏には、たとえば雇用の受け皿や緊急事態への対応など、目に見えていない役割もあるのだ。公共事業=悪という構図ができあがりつつあるなか、九州の建設業界は、どのように歩まなくてはならないのだろうか。(社)熊本県建設業協会の橋口光徳会長に話しを聞いた。
――まず熊本県の現状をお聞かせください。
橋口 昨年の政権交代を経て、先が非常に見えにくい状況が続いております。「コンクリートから人へ」というキャッチコピーが広がり、公共事業は減らさなくてはならないという世間の風潮ができあがっているように思えます。東京や大阪、名古屋などの大都市では民需がある程度あるようなので、それでもよいのかも知れないのですが、熊本のような地方では公共事業の縮減は大きな痛手となります。
――都市と地方では意味合いが異なるのですね。
橋口 はい。私たち建設業界は雇用の受け皿として地方経済の調整弁を務めてまいりました。公共事業は単にインフラを整備するだけではないのです。地域の経済を下支えするという大きな役割も、ぜひ知っていただきたいと思います。急激な変化は誰も好んでいません。熊本市内ならば、まだ夜もにぎやかで活気がありますが、いわゆる地方の地方、離島は都市部から離れたところでは、どんどん元気が削られていっています。
――福岡でも状況は悪いと思っていたのですが、熊本はさらに悪化しているということですか。
橋口 分かりやすく言うと、福岡には熊本の10倍も20倍も多岐にわたる職種が集まっています。多様性がクッションになっていて、健全でいられるのだと思います。これが熊本県の地方、たとえば天草市だと公共事業が年間60億円、農林水産業が60億円程度、年金が320億円です。主幹産業は年金なのですよ。この事を見ても分かるように、地方と都市とでは格差が歴然としています。
――地方に必要な公共投資が減らされると死活問題なのですね。
橋口 熊本に限らず、建設業は最終的なセーフティネットとしての機能があります。農業の方が農閑期に建設業の手伝いをしてくれていて、その労働によって生活をしている人もいるのです。第1次産業の受け皿が建設なのです。それが近年、建設業者の新規事業として農業をすすめるということも行なわれております。これはかつてない光景だと思います。公共投資が縮減されるのは仕方ないとしても、それに伴って業界規模が縮小し、そのために生まれた失業者たちのためのセーフティネットはないのです。
【文責・柳 茂嘉】
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