福岡市の吉田宏市長はきょう、異例な形で今年11月に予定される福岡市長選挙への出馬を表明する。
吉田市長は、きょう夕方に開かれる民主党市議団の会合に出席し、再選出馬への意思を明らかにする。同市議団は、市長選における吉田氏支持の方針を決めていたが、吉田氏自身が「総合的に判断して適切に行動する」などとして態度を保留してきたため、出馬の意思確認をする必要に迫られていた。
背景には、同市長選に出馬の意向を示していた元佐賀市長で政府行政刷新会議の事業仕分け人・木下敏之氏が、民主党県連に推薦願を出したことがある。
木下氏は佐賀市長時代から民主党との関係が深く、現在も民主党政権の目玉である事業仕分けに携わっている。一方、平成18年の市長選で民主党の公募に応じ、同党の全面支援を受けて初当選を果たしながら、3回の国政選挙(平成19年参院選、平成21年衆院選、先月の参院選の3回)で中立を決め込んだ市長には党中央にパイプがない。県連内でも吉田氏の評価は低く、吉田氏を強力に推すのは民主党市議団の2人の幹部のみという状況だ。
あわてた2人の市議らは、民主党市議団内部の不満を糊塗し、一枚岩をよそおいながら同党推薦を得ようと必死になっている。
17日に開かれた同党県連の常任幹事会では、2人の市議らが吉田氏推薦を迫ったものの、推薦の可否検討には「推薦願」が前提となることが確認されている。きょうの出馬表明は、推薦を得るための一里塚でもあるが、現職市長が市議会ではなく一会派の会合で出馬表明することは異例だ。
参院選の投開票日に、民主の現職だけでなく、自民新人(福岡選挙区)と公明新人(比例区)の事務所にも挨拶に出向いた市長は、自民、公明の候補者擁立を見極めてきたといわれる。民主以外からも広範な支持を取り付けたかったとされる吉田市長は、木下氏の動きのせいで追い詰められた形だ。
民主党内での推薦争いに注目が集まる。
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