大分県建設業協会 会長 梅林 秀伍 氏
東九州の大分県では労働人口の10人にひとりが建設業に携わっているという。雇用の受け皿として、また地域経済の主役として建設業はかつてない危機に直面している。大分県建設業協会の梅林秀伍会長に建設業の今を聞いた。
――全国的に公共工事の絶対数が減少しています。大分の状況はいかがでしょうか。
梅林 工事の量でいえばピーク時の半分くらいに下がっています。工事量は減っているのですが、県全体の企業の数は横ばいの状態です。つまり1社あたりの規模が小さくなってきているのです。大分県では5万人くらいが建設業に携わっております。全産業で53万人の労働力が大分県にはあるのですが、そのうちの9.4%が建設業です。これは大きな数字だと思います。その中で仕事量が減ってきて、建設業の先行きはどうやって食べていくのか、大きな不安を抱えている状況です。
――政府は成長戦略によって来年は2%弱の成長を見込んでいます。これは地方にとっても明るい兆しと言えるのでしょうか。
梅林 日本の全産業は1%が大企業で、残りの99%が中小企業という構成になっております。大企業が日本のGDPを支えているのかも知れないですが、地域経済では中小企業が主役になっているのです。成長率が回復傾向にあると言われても、大分は未だにデフレスパイラルから抜け出せていない感じを受けています。多少、観光で海外の方がお見えになっていますが、県全体として景気回復の兆しは見えていません。
――建設業に限って言えば、その理由はどこにあるのでしょうか。
梅林 税収の不足が挙げられると思います。大都市と違い、民需はほとんど期待が持てません。公共工事が縮減されていますし、加えて価格競争も激化しています。地域のインフラ整備や維持管理など本来しなくてはならない工事も後回しにされてしまっています。インフラも一度つくったらそれでよい、というものではありません。維持管理をしてこそ長持ちさせることができるのです。この維持管理を万全にしないと、市民の安心・安全、はては生命にまでかかわる重大な問題が発生しかねません。
――値下げ合戦が発生しているという現状はいかがお思いでいらっしゃいますか。
梅林 民間工事では低価格競争により、場合によっては赤字を覚悟して受注するという企業も現れかねません。そうなりますと、結果的として下請け業者にしわ寄せがいくことになり、最悪の場合は倒産にいたることも考えられます。これでは企業の存在意義すら危ぶまれてしまいます。
【文責・柳 茂嘉】
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