大分県建設業協会 会長 梅林 秀伍 氏
東九州の大分県では労働人口の10人にひとりが建設業に携わっているという。雇用の受け皿として、また地域経済の主役として建設業はかつてない危機に直面している。大分県建設業協会の梅林秀伍会長に建設業の今を聞いた。
――およそ1割が建設業に関わっていらっしゃるとおっしゃいました。
梅林 地方では建設業とともに農家の方が大勢いらっしゃいます。その方々が農閑期に建設業を手伝って生計を立てているのです。10人以下の建設業者も、自社だけでは工事がまかなえないので、農家の方々の助けを借りているのです。お互いが支えあって成り立っているのが地域経済なのです。
――支えあう一方が危うくなるとバランスが崩れる、ということですね。
梅林 今は変革のときだと思います。世界的にも今までの考え方が通用しない時代になってきています。このような変革のときはどの業界でも非常事態だと思います。なかでもとくに建設業は逆風が非常に強く吹いているように感じます。国の公共事業費で昨年度比18.3%の縮減がなされましたが、このような激減措置は地方の経済を支えている建設業界にとって死活問題になります。雇用の受け皿として、また、災害時における緊急復旧のためにも建設業は存在し続けなければなりません。
――受け皿ではあるけれども、若者が積極的に建設業に入ってこないという話も聞きます。大分では若者の建設離れの問題は深刻化していないですか。
梅林 大分にはかつて工業高校がたくさんありました。そこには土木科があり、そこを卒業した優秀な生徒たちが建設の第一線で働いてくれています。近年、その工業高校も合併などにより総合高校に姿を変えております。その高校に限らず土木科自体が縮小していく傾向にあり、土木を選択する人材が少なくなってきているのです。日本は資源が豊かな国ではありません。ものづくりの技術でここまで発展してきたのです。市民生活に土木がどれだけ大切か、過去の先輩たちがどれだけ培ってきた産業であるかということを若者にもぜひ知ってほしいと思います。地域の発展は日本の発展につながり、日本の発展は世界の技術の進歩につながります。技術を担う若者が必ず必要になります。若者にものづくりの素晴らしさを知ってもらいたいと思います。大分県の技能士会では、会に所属している方々がボランティアで子どもたちに竹馬や竹とんぼの作り方などを教えています。そのときに子どもたちは自分の手でものをつくる喜びを感じてくれているようです。多くの子どもたちにつくる楽しさを知ってほしいですね。それが建設業の未来にもつながると思います。
――何かものをつくると、つくった人にしか分からない感動があります。それをひとりでも多くの若者に経験させてあげたいという思いは私も同じです。そして、それこそが建設業界の明日を担う若者を育てるということになるのですね。本日はご多忙のなか、ありがとうございました。
【文責・柳 茂嘉】
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