<先手先手の改善策がポイント>
世間の状況が悪化してくると施主の支払いに遅延が生じる。特に不動産ファンドの契約不履行がまかり通りだした。同業者が建築代金を回収できない惨状を目の当たりにしている。金子社長も回収面では反面教師にした。代金回収は社長が自ら交渉に臨んだ結果、不良債権の発生は食い止めた。「焦げ付きまで食らっていたらアウトでしたよ」と同氏は笑う。
09年3月の日建コーポレーションの廃業を踏まえ、09年3月期には一挙に2億円の赤字を捻出させた。決算確定する矢先の09年5月には高松組の倒産だ。日建建設が所属している福岡建設協力会の会長をしていたのは高松組の社長であった。金子社長は「これでますます我々、業界、そして弊社に対しての風当たりは強くなる。特に銀行との交渉は微妙になっていく」と判断した。そして、「業績をV字回復させることが先決だ。それしか信用を復活させる術はない」と腹をくくったという。
09年10月から10年1月にかけて、リストラを断行した。その事前段階で対象者に対し、09年8月より全体説明および、代表との個別面談を実施した。この結果、定年退職者2名を含んだ11名が退職した(現場技術者は業務委託契約を結んだ)。金子社長も報酬を45%カットした。交際費も大幅に圧縮した。それらの経費見直しにより、10年3月期において販売管理費は2億円(前期2.3億円)を切って1.9億円にまで減額させた。
様々な苦しみを伴った改革断行が功を奏した。10年3月期においての完工高21億5,000万円に対して、経常利益7,000万円を絞りだしたのだ。おかげで自己資本回復の目途がついた。それでも金子社長は「万々歳という段階ではありません。ようやく水面上に頭ひとつ浮かんだにしか過ぎないとの現状認識です」と気を緩める様子はない。次から次へ改革案の連続技を仕掛けている。
<13億円でも利益捻出できる強固な体質づくりへ挑戦>
金子社長は、2011年期に向けて、役員を含む14~15名体制にまで組織のスリム化を実現し、販売管理費を1.3~1.4億円まで減らすことを目標にしている。要は、完工高13億円で飯が食える強固な体質を構築することを決意しているのである。「とりあえず自力で受注できる枠を15億円としているので2億の余裕を持たせています」と説明する。一方では新分野への新規投資にも余念がない。福岡不動産開発・河村デザイン室との共同プロジェクトである"ロコハウス"の施工・販売である。
この"ロコハウス"のモデルハウスが3月にオープンした。客の反応は非常に良い。再度、住宅事業へのトライである。あらゆる分野へ反攻するためのインフラ整備が着々と進んでいるのだ。
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