沖縄県建設業協会 会長 照屋 義実 氏
2005年、沖縄では県発注工事を巡る談合事件の大規模な摘発が行なわれた。170社にのぼる企業に受注金額の10%、およそ100億円のペナルティが課せられ、今もその対応に追われている。県建設協会は、あまりにも重い負担にペナルティの減額を申し出続け、現実的に支払うことができる数値として5%に落ち着くことになったが、それでも疲弊した業界には厳しい状況が続いているという。談合廃絶後のダンピング競争、米軍基地移設問題と沖縄が抱える問題は山積している。沖縄県の「今」を建設業協会会長照屋義実氏に聞いた。
――沖縄県建設業界の現状をお聞かせください。
照屋 2005年、公正取引委員会による大規模な談合の摘発が沖縄で行なわれました。県が発注した工事の入札に関するものなのですが、全部で170社が対象となり、100億円にものぼるペナルティが課せられました。この170社のなかにはジョイントベンチャーを組んでいただけの会社も含まれるなど、大変に厳しい判断が下されたのです。ペナルティの100億円は受注金額の10%に当たる金額で、あまりにも高額であり、支払期限が迫ってきているのですが支払い能力を大きく超えてしまっていることから、減額をお願いし続けてきたという経緯があります。今年6月に5%にまで下げていただき、かつ分割の支払いも認められるようになりました。
――談合の後処理に追われているのですね。
照屋 沖縄県では公的な需要に頼らざるを得ない状況が続きました。減少が続く公共事業のなか、なんとか建設業を成り立たせるために会員企業は努力を重ねてきたのです。談合自体の善悪の判断は県民の皆様に委ねますが、決して不当に金額を吊り上げてきたわけではないことは理解していただきたいと思います。
――その後の状況をお伺いします。05年以降、どのようになりましたか。
照屋 相変わらず民需は期待ができず、公共投資に頼っていることは変わりないのですが、公共工事の縮小傾向は続いており、かつてない厳しい経営環境にさらされております。県建設協会の会員数もかつては540社加盟があったのですが、今では390社ほどにまで落ち込んでしまいました。これは05年以降、価格競争が激化したことにも原因があります。予定価格で2割の減少、それに対してさらに2割少なく入札をし、受注するという状況です。これではとても適正な利益を望むことはできません。ダンピングによる受注競争は好ましくないですね。
――全国的に価格の過当競争傾向は見られるように思います。さらに沖縄は最南端の島で構成された県という特殊な事情がありますね。
照屋 沖縄県には有人の島が38あります。その島の間でも格差は歴然とありますし、ここ沖縄本島でも北部と南部とで差がはっきりとしているのです。本島の北部、辺野古周辺は「やんばる」と呼ばれるのですが、その地域は過疎化が進んでいます。この北部を活性化させようと年間100億円、それを10年間継続して計1,000億円の経済振興策が執られてきました。ところが、実際にふたを開けてみると、そのお金のほとんどが本土に還流してしまっていることが分かりました。これでは地域振興はできません。
【文責・柳 茂嘉】
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