沖縄県建設業協会 会長 照屋 義実 氏
2005年、沖縄では県発注工事を巡る談合事件の大規模な摘発が行なわれた。170社にのぼる企業に受注金額の10%、およそ100億円のペナルティが課せられ、今もその対応に追われている。県建設協会は、あまりにも重い負担にペナルティの減額を申し出続け、現実的に支払うことができる数値として5%に落ち着くことになったが、それでも疲弊した業界には厳しい状況が続いているという。談合廃絶後のダンピング競争、米軍基地移設問題と沖縄が抱える問題は山積している。沖縄県の「今」を建設業協会会長照屋義実氏に聞いた。
――やんばるの地は今、米軍基地問題で揺れていますね。
照屋 沖縄は第二次世界大戦で日本唯一の決戦の場となりました。その後、アメリカによる統治を経て、本土復帰を果たしました。沖縄県民には米軍に対する様々な思いがマグマのように流れているのです。できることならば沖縄の地から出て行っていただきたいと思っています。
――米軍がもたらすのは弊害だけではないと思うのですが。
照屋 経済的に潤うからいいではないか、それに頼っている側面もあるではないか、と指摘されることがありますが、実際には違います。すでに沖縄県の経済で米軍に依存している割合は1割にも満たないのです。その上、日米地位協定があります。米軍が何か問題を起こした際にも、日本人は米軍敷地内を捜査することすらできません。明らかに弊害の方が大きいのです。
――普天間の移設は沖縄にとって大きな問題なのですね。
照屋 普天間基地を移設したら、本島の中南部の基地用地は返還されることになっています。私たち建設マンとしては、この跡地の開発が沖縄の発展の鍵を握っているように思えるのです。用地が返還されたら、そこに開発の余地が生まれ、新たな都市のデザインができあがります。将来に対して有用なアイデアを盛り込むこともできるのです。
――将来へのお考えを伺います。
照屋 沖縄は古来、東南アジアとの交流を盛んに行なってきた歴史があります。福岡へ行くのも、上海へ行くのも、東南アジアへ行くのも沖縄からならば変わらない距離なのです。この地の利を生かして、東南アジアと技術提携や人的交流を深めることができたならば、新たな時代が訪れると思います。道州制導入の議論が盛んに行なわれておりますが、沖縄県は九州とは別の区分にしてほしいと考えます。九州8県のなかのひとつでは、どうしても独自性が発揮しづらいと思うからです。沖縄は地政学的優位を生かした独自の道を歩むべきと思います。沖縄の県是には「自立・平和・共生」という3つが掲げられています。まずは本土に頼らず自分たちでやっていけるようにすること。そして米軍の問題を解決すること。加えてアジアの一員として共に繁栄すること。この3点こそが沖縄の目指すところだと思います。
――沖縄県には美しい海や自然があります。観光客も増加し続けていると聞きます。米軍基地問題が解決したならば、より魅力溢れる県へと生まれ変わることができるかも知れませんね。本日はお忙しいなか、誠にありがとうございました。
【文責・柳 茂嘉】
◆建設情報サイトはこちら >>
建設情報サイトでは建設業界関する情報を一括閲覧できるようにしております。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら