リサイクルを通じて環境社会に貢献
(株)竹田商会 代表取締役社長 竹田 奉正 氏
<鋼材販売とリサイクル 両輪で効率化が実現>
―鋼材の販売エリアは九州ですね。
竹田 はい。九州のみで営業しております。納入先ではスピードが非常に重要です。一時期、売上30億円の壁をどうしても突破することができませんでした。あれこれ思索した結果、人の倍働けば、倍の結果が望めるのではないかと考えるようになりました。それ以来、早朝4時半に現場に出て汗を流すということを私が率先してやったのです。私の姿を社員が見て同じように朝早くから仕事に取り組んでくれるようになりました。そのおかげで社内のムードがよくなり、結果として30億円の壁を乗り越えることができたのです。これは社内のモチベーション向上のためだけではありません。鋼材を使う現場では朝の7時半に材料が揃っていなければ、作業がストップしてしまいます。ですから、私たちはスピードを重視しているのです。鹿児島のある取引先の会社は「地元の鋼材屋より早い」と言われました。空を飛んでいくわけではないのですが(笑)、高く評価していただいたことを、非常にありがたく思っております。
―鋼材を他県にまで運び、スクラップを積載して帰福する。この効率のよさが利益を生んでいるのでしょう。
竹田 どの業界も同じだと思うのですが、今は大きな利益が生まれることはないと思うのです。いかに能率を上げて、時間を有効に使うかが重要です。時間を無駄にすることが何よりも利益を圧迫すると思います。現場まで資材を届ける際も、帰りに荷台を空にして帰ってきては道中の時間が無駄になりますから。工場を出るときも帰ってくるときもトラックの荷台は満載にしていなくてはいけません。広域でまわって、各所で小さな利益を上げていくこと。大きな利益が見込めない以上、そうやってグロスで黒字確保するほかないと思います。
―先日、北九州支店を見学させていただきました。その折にも、社長自ら敷地内のゴミを拾ったり、廃材を定位置に戻したりしていらっしゃいましたね。
竹田 作業現場がきれいに片付いていることも作業の効率化につながります。小さいことを積み重ねることで大きな差になるのではないかと思います。
―企業を維持するのは大変なことですね。
竹田 私は伝票一枚まで、すべて目を通します。仕入れ値が高いときは担当者を呼び、再度交渉させるようにしています。何を格好いいことを言っているのだ、会社はそれでは成り立たないんだぞと、担当者に言います。それくらいしないと、儲けは生まれないのです。
<安値競争は何も生まない>
―業界では安値競争もあると聞きます。
竹田 利益度外視で安値受注をする企業もあるようです。けれども、私はこの方法はよくないと思います。誰も幸せにならないと思うからです。高く売って利益をむさぼろうということは世間が認めてくれません。ですから、安く売って競争相手を排除していこうということなのでしょう。けれども、事業というのは赤字を出さないようにやらなくてはならないのです。同業者の足を引っ張るための値下げは、結果として自社の体力をすり減らします。他社の受注も阻害します。これでは業界がさらに萎縮してしまいますから。
―適正な価格で商売しないと、いずれは共倒れになってしまうのですね。
竹田 事業を続けるためには、人材が何より大切です。人材を育てるためには予算も必要になります。価格競争の結果、人材育成すらままならず、給与も充分に与えられなくなるのは悪い循環に陥る危険があるのです。先日、弊社が加盟している特約店組合の39回目の総会に出席しました。以前は大阪からの企業も含めて33社参加していたのですが、今は17社にまで減ってしまいました。同業者が廃業していくのは寂しいです。
―そこまで落ち込んでしまっているのですね。
竹田 はい。業界内で情報を共有していないことがダンピングにつながり、業界衰退の原因になっていると思います。もっと業界内の風通しをよくして、情報を共有していかなくてはならないのではないかと思います。人材の育成も必要ですし、従業員の生活の向上も必要です。無駄な競争は何も生みません。値引きをすることだけがお客さまのためになるわけではないのです。素早い対応をしたり、高い品質を確保したりしてサービスを向上させるという利益還元の方法もあるのです。
<野球が縁で若手が集結>
―御社には若い社員の方が多くいらっしゃいますね。
竹田 野球が縁で入社を希望してくれる若者が集まってくれています。
―御社は昨年まで、軟式野球のサンデーリーグで4年連続して地区優勝されましたね。その野球部目当てで入社してくる方がいらっしゃるのですか。
竹田 私の幼い頃からの夢は野球を続けられる職場に就職することだったのです。仕事の内容は決めかねていたのですが、これだけは譲れませんでした。結局、就職することはかなわず、自分で会社を興すことになりましたが(笑)、野球を続けたいという思いを持った若者は数多くいます。そういう人たちが集まってきてくれているのです。
―野球部を廃部する企業が多くなってきています。
竹田 部を存続させることも企業にとってはリスクになりますから。先日も早朝試合の際に社員が足を骨折してしまいました。完治するまでに2カ月は仕事ができなくなりますが、仕方がありません。部を廃止する考えは私のなかには存在しないのです。この縁でいい若者たちが集まってくれているのですから。
―野球を通じて集まった仲間が次代の業界を背負うわけですね。
竹田 人が集まらなければ企業存続は危ぶまれますし、人が育たなくては企業成長はなし得ないと思います。野球を通じて集まってくれた社員の夢のためにも黒字を計上し企業を存続させ続けなくてはなりません。
―そのためにも業界の健全化が必要なのですね。
竹田 今は業界内で互いにしのぎを削る時期ではないと思います。前に進むために適正な価格で利益を上げていかなくてはなりません。日本は埋蔵資源の少ない国です。リサイクルできるものは、やっていく姿勢が大切だと思います。これからも金属のリサイクルを通じて、環境社会に貢献したいと考えております。
―本日はお忙しいなか、ありがとうございました。今後のご発展をお祈りいたします。
【文・構成 柳 茂嘉】
[COMPANY INFORMATION]
(株)竹田商会
代 表:竹田 奉正
所在地:福岡市博多区上牟田1-17-21
創 業:1964年8月
設 立:1980年1月
年 商:85億円(今期予想)
従業員数:約80名
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