中国では、2007年生まれの子供を干支にちなんで「ゴールデン豚・ベビー」、08年生まれの子供を「オリンピック・ベビー」との愛称で呼んでいます。この２年は、縁起のいい年とされ、新生児の人数が特に多かったのです。
両親は70年代から80年代の人々で、自分が高い水準教育を受けたことから、できれば子供にも幼稚園から良いスタートを切らせたいと考えています。そして現在、中国は幼稚園不足という課題に新たに直面しています。

＜望ましい公立幼稚園＞

　公立幼稚園は、一般家庭にとって一番望ましいところです。最大の魅力は、学費の安さ。特に「一級」（最高のグレード）といわれる優良な公立幼稚園では、先生が優秀で設備もそろっています。しかし、あまりにも入園を希望する保護者が多く、人気の高い幼稚園の一部では「園児募集計画」を公表せず、こっそりと募集を済ませるということが珍しくはありません。

　一般公募の場合、申し込むための行列が３日前からできるのはよく聞かれる話です。極端な例では、６月９日、北京市昌平区にある工業幼稚園の園児募集でできた行列の先頭は８泊９日で並び、記録を作りました。
しかしながら、公立幼稚園には戸籍の制限が設けられています。幼稚園近辺の住宅に戸籍を持たないと、原則的に入園できないのです。

＜二極分化する私立幼稚園＞

　一方、知名度のある私立幼稚園は、最近ますます高級化しています。教室のデザイン、遊戯施設、先生の学歴など、一流かつインパクトのあるイメージを保護者たちに与えることに全力を尽くしています。したがって、学費が高く、一般家庭の子が通園することは、経済的に無理と言えます。その学費は、年間で２～３万人民元（約26～39万円）。最高は９万人民元（約117万円）ともいわれています。にもかかわらず、ほとんどの私立幼稚園は、定員を満たしているそうです。

　その反対で、「安さ」を武器とする無許可の民間（私立）幼稚園が雨後のタケノコのように続々と作られています。特に大都市の出稼ぎ労働者にとって、入園の際、戸籍もいらず、学費も手頃な値段になっているため、需要は高いそうです。09年７月に出された北京市政府筋の調査報告書によると、こうした「違法幼稚園」は1,298カ所あり、「合法幼稚園」の数を上回っていました。

　しかし、これらの民間幼稚園は学費が安いかわりに、設備が粗末で、安全措置もあまり組み込まれていません。したがって、予想外の事故が度々起きています。実際に、今年に入り、幼児が死に至った火事が何カ所かであったそうです。そうした事故が起きて以来、政府は集中的に取締りを行なっています。しかし、取り締った後に、あぶれる幼児たちの受け皿については、何ら対処がとられていません。

【劉　剛（りゅう　ごう）氏　略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年３月より福岡に常駐。趣味は読書。

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