私は感じている。日本・九州の大転換をしなきゃいけない、と。
―九州全体をひとつのモデルケースにした、新しいエネルギー、新しいインフラによる街作りが大事だということですね。
出井 7月に私が福岡でスピーチした「国際知識経済都市会議」では、ストックホルム、シアトル、バンクーバーほか、10都市の代表が集まりました。これは偉大なことで、この都市が協力して実験的な取り組みを行えば、大きなインパクトになります。面白いのは、それらの街の多くが海沿いにある、ということなのですが、共通点があると共存もしやすいわけです。
世界が協力して新しい街作りをしてみたら、現場ができるじゃないですか。そこに新しいテクノロジーをドンドン入れていけば、エネルギーの地産地消みたいなのができるわけです。九州をまるごと自然環境、老人社会、農業、工業などを包括したモデルアイランドにしてしまうという考えもありえます。九州は温泉があるわけですし、地熱、風力、水力発電をやっていますので、そこにスマートグリッドがしっかりと導入されれば非常に効率的なインフラが整います。
同時に、道のインフラ、JRのインフラ、エネルギーのインフラ、テレコムのインフラ、教育のインフラ、病院のインフラなどをもう一度考え直して、九州を世界一住みやすい安全・安心のアイランドにしていく。そうすれば、世界中の人たちが九州を見に来るでしょう。
それを九州だけでやるのが大変なら、先ほど述べた会議に参加された海外の都市や九州の大学なんかと連携すればいい。すばらしいショールームというかモデルケースシティみたいにしていけば、もう世界中の目が九州にいきます。そうなると、ゼネコンにも新たな活性化の道が開けますし、そういう意味でも私はインフラ投資をすべきだと思います。
もしお金がないのなら、海外から投資を引っぱる、という手もあります。アジアの国々だったら、地理的にも近いわけですし。周りに仲間を作っていけば、人の行き来も増えると思います。航空便も、もっとローコストキャリアを導入して、香港などからも自由に入れるようなオープン政策をとればいいと思います。
【大根田康介】
<プロフィール>
出井 伸之(いでい のぶゆき)
1937(昭和12)年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。60年にソニー入社。95年に社長就任。99年よりCEO(最高経営責任者)を兼務。2000年、会長兼CEO。05年に退任。06年、クオンタムリープ株式会社を設立し、代表取締役に就任。産業の活性化や新ビジネス・産業創出を実現するための活動をグローバルに展開している。他にアクセンチュア、百度(Baidu)、フリービットの社外取締役、美しい森林づくり全国推進会議の代表などを務める。著書に『迷いと決断―ソニーと格闘した10年の記録』(新潮社、2006年12月)、『日本進化論―二〇二〇年に向けて』(幻冬舎 、2007年7月)、『日本大転換―あなたから変わるこれからの10年』(幻冬舎 、2009年9月)などがある。
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