<入園難の原因>
(1)供給が減少、需要が増加
北京市の教育関係者によると、1996年に3,056カ所あった幼稚園は、2010年の時点では1,266カ所、58.57%も減っているといいます。
市場経済の発展につれ、今まで国営企業が営んできた幼稚園が数多く閉鎖されるようになりました。これらの幼稚園は、もともと国営企業から資金援助があって維持されていたのですが、企業経営悪化やコスト削減などの理由で切り離されたり、経営をやめたりしています。統計では、2000年の時点で中国全土において国営企業に付属する幼稚園は1.6万カ所存在していましたが、07年には5,000カ所ぐらいまで激減しています。
しかし、子供の人口は、特に大都市で急増しています。そもそも都市の幼稚園は、戸籍人口に合わせて作る計画ですが、非戸籍人口が大幅に増えていることで、結果、幼稚園が足りなくなっています。
07年から09年までの3年間で生まれた北京市46万の新生児のなかで、戸籍児は49%、非戸籍児は51%です。現在ある幼稚園には最多で25万人の子供しか入園できません。
(2)政府の幼稚園教育方針が不十分
現在、中国政府が実施している幼稚園教育の方針は「公立がモデルを示し、民間が主力となる」です。幼稚園の開設に対し、政府はそんなに責任を持っていません。つまり、財政支援を保障しなくていいことになっているのです。
中国では、幼稚園にかかる教育費は中小学校と混雑しており、依然として低い水準に止まっています。全教育費に占める割合は平均1.3%です。先進国では、一般的に3%以上であり、たとえばフランスは11.1%、デンマークは 10.6%に達しています。これらの数字が中国における幼稚園運営の厳しさを物語っています。
(3)固定資産税が保護者の負担増に
一方、調査によると、一部の私立幼稚園では、その高額な学費に高額な固定資産税引当分を含んでいることが分かりました。
ご周知の通り、経済発展に伴い住宅価格は急騰しています。その急騰している住宅団地のなかの土地を使用し、幼稚園を設立するには毎年、地方政府に対して高額な固定資産税を払わなければいけません。
この税コストが学費に転換されるため、結果、保護者らの負担増につながっているのです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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