世界を賑わせたサッカー・ワールドカップに世界のビジネスマンから食い入るような視線が集中しました。如何に自社製品を売り込むか、それぞれに知恵を絞り込みました。そのなかで、中国製の「ブブゼラ」(ラッパ形チアホーン)は、各スタジアムでファンに吹き鳴らされ、一気に世界中に有名になりました。
しかし、この賑やかな事象の裏で「中国製造」は厳しい教訓を与えられました。簡単に言うと、「大儲け」を期待していた中国メーカーが、結局わずかな利益しか出せなかったのです。
<作る人が儲からない、儲かる人が作らない>
統計では、サッカー・ワールドカップ開催中、中国からの「ブブゼラ」輸出総額は約2,000万米ドルでした。しかし、その利益はたったの5%です。
CIF価格で1個あたり約4人民元(約52円)の「ブブゼラ」では、メーカーが得る利益は0.2人民元(約2円60銭)だけ。しかし、一旦南アフリカに着くと、小売価格が爆発的に急上昇。サッカー・ワールドカップのオフィシャル商店では107人民元(約1,391円)、スーパーで71人民元(約923円)、スタンドでも45人民元(約585円)になりました。一番安いスタンド価格と比べても、10倍の差が付いたのです。
「テレビで自分が作った『ブブゼラ』を指して自慢する一方、あまりもの薄利に涙を流す」。そうした複雑な心境に中国メーカーは陥りました。
<薄利の究明>
話によると、中国浙江省寧波市のある民間企業の社長が、最初に南アフリカの民族楽器からインスピレーションを受けて「ブブゼラ」を作りました。しかし、彼は知的財産権の意識が全くなく、設計図を特許申請しないまま、生産に転じました。その後、アフリカのあるビジネスマンがこの商品に気づき、販売促進に力を入れ始め、中国浙江省および広東省の多くの企業が生産に乗り出したのです。開発者は自社のオリジナル商品が世界中の消費者に人気を集めているのを見て、初めて重大なミスを犯していたことを認識しました。
知的財産権に対する意識の薄さが原因で、大きな損失を招きました。実際に、「これは『中国製造』にある問題の氷山の一角に過ぎない」と専門家が指摘しています。今、世界市場のありとあらゆる所で安売りされている「中国製造」の商品は、「ブブゼラ」のように、ほとんどが薄利です。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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