アメリカの大手投資ヘッジファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)が6月25日、フランスのBNPパリバの関連会社が保有していたダヴィンチ・ホールディングス(以下、ダヴィンチHD)に対する債権約205億円と、それに付随した新株予約権を取得したことを発表した。フォートレスがダヴィンチを実質、買収したことは、不動産債権投資時代の再来を予感させる。日本の不動産市場は1990年代後半に外資系ファンドが銀行から不良債権を買い取るといった行為で"ハゲタカファンド"と揶揄された時代があった。まさにビジネスの歴史は繰り返す。
フォートレスは98年設立。ディストレスト投資(経営不振、破綻企業の債権を割引購入後、一部を株式化し、経営再建に向けて積極関与することで投資回収を目指す投資手法)に強みを持つファンドで、ニューヨークに本拠地を置く。有利子負債が重い企業の債権を金融機関から安値で買い集め、その企業の経営陣に債権を株式に転換するように促して筆頭株主になり、買収してきた。経営不振の企業または破綻企業を、負債を通じて支配する日本では珍しいM&A手法である。
赤字続きのダヴィンチHDは監査法人から継続企業の疑義(ゴーイングコンサーン)が付記され、今年の6月1日に大証ヘラクレス市場において上場廃止となった。ダヴィンチHDは不動産ファンドブームに沸く06年前後に隆盛を誇り、大型物件の入札に参加し、次々と高値で落札。取得価格2,309億円と言われる「虎ノ門バストラル」をはじめ、「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(同2,000億円)などを保有。福岡では、西鉄天神大牟田線福岡(天神駅)近くの福岡市中央区今泉に「ダヴィンチ今泉Ⅰビル」を保有するほか、かつては同市中央区天神のベスト電器裏に「ダヴィンチ福岡天神ビル(現・福岡天神フコク生命ビル)」を保有していた。
金融機関が放出する貸出債権を割安の価格で取得し、年率20%程度の運用利回りを目指す不良債権ビジネスを手掛けるフォートレス。同社にとっては魅力ある買収だったと推測される。
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