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小泉劇場、そして誰もいなくなった 木村剛と堀江貴文、村上世彰の点と線(下)
社会
2010年7月23日 08:00

2010.0723.koizumi.imege.jpg 新自由主義と呼ばれた「小泉の時代」を彩った堀江、村上、木村の3人には、こんな接点があった。すでに木村氏は、小泉純一郎首相の懐刀である竹中平蔵金融担当相のブレーンとして不良債権処理の加速策に辣腕を振るい、「政商」のように振る舞っていたオリックスの宮内義彦氏の知己を得た村上氏は株式市場をかき回した。堀江氏はギルドのような球界に殴り込みをかけ、既得権益に挑戦状を突きつける輝けるスターだった。

 村上氏の紹介で、ライブドアは木村氏の会社KFiと顧問契約を結んだものの、まだこの時点では、ライブドアが既存の銀行を買収するか、それともゼロから新銀行を設立するか計画は煮詰まっていなかった。ライブドアのやる気を本気と見た村上氏が「木村さんが振興銀行株を売りたがっているよ」と告げると、堀江氏やその右腕のライブドアCFO、宮内亮治氏らは一気に振興銀行株取得に傾いていった。宮内氏は苦手だった村上氏に何度も「振興銀行の件、よろしくお願いします」と懇願していたことが後に法廷で明らかになっている。

 このディールの経緯を知るライブドアのOBは、いまになって不思議なことを打ち明ける。「木村さんは、いったん株を売るけれど、後で買い戻したい、という条件をつけてきたのです。金融庁の検査か日銀考査か何か分かりませんが、当局の意向が背後にあって、木村さんが一時的に株を手放さなければならないようでした」。当時、木村氏は一緒に振興銀を旗揚げしたオレガの落合伸治氏と対立しており、「そのことが株を手放す背景にあったようでした」(同OB)。
 この「買い戻し条件」があったうえに、木村氏がライブドア以外にも株式譲渡を持ちかけていたことで交渉は難航。最終的に木村氏がGMOインターネットに売却すると決め、ライブドアとの交渉は決裂した。ライブドア側は「5,000万円の顧問料を払ったのに、ライバルのGMOに売るなんておかしい」と反発し、後に顧問料の一部を返還するよう交渉している。結局、振興銀株の取得が不首尾に終わったことをとりなすように村上氏が堀江氏に持ちかけたのがニッポン放送株取得で、この後、堀江氏たちはそちらのほうへ舵を切ることになる。
 
 振り返ると不思議なM&A交渉である。コンサルティング契約を結びつつ、株式譲渡交渉を行なうという利益相反が疑われかねないような交渉術。買い戻し特約の存在。それに当局の意向。木村氏の経営手法にコンプライアンス上、あるいは企業倫理上の問題があったように思える。堀江氏が怒ってコンサルタント料の返還を求めるのも無理からぬ話だ。

 あの小泉の時代、戦後経済を支えてきた名門企業の力が衰える代わりに、規制緩和の波に乗ってITや投資ファンドなど新興勢力が台頭した。日本の「主流」のエスタブリッシュメントが不良債権処理などで行き詰まり、代わって解決策を導き出したのは突如表舞台にたった木村氏のような「傍流」の男たちだった。
 
 傍流の男たちには、主流をかき分けて背伸びする無理があったのか。堀江氏、村上氏が逮捕され、そして木村氏である。日本中が沸いた小泉劇場の出演者がまた一人、表舞台から姿を消す。
 

(了)


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