鹿児島県建設業協会 会長 川畑 俊彦 氏
コンクリートから人へ。民主党のキャッチフレーズだ。この言葉が先行し、曲解されてコンクリート、つまり建設業界と公共工事がまるで悪の象徴のように思われてしまっている。マスコミの報道のあり方、建設業界自体の情報発信のやり方、この両者が今、問われているのである。鹿児島県建設業協会の川畑俊彦会長に鹿児島県の状況とその未来を聞いた。
――公共事業の規模が縮小されて、パイが小さくなったために過当競争が広がっていると聞きます。鹿児島県ではいかがでしょうか。
川畑 まず、工事の予定価格自体が下がっています。10年前と比べると2割程度の下落幅となっています。加えて価格競争が激しくなっている状況があります。鹿児島では平均落札率が予定価格の81.6%となっています。これは全国で低い方から数えて9番目です。予定価格で2割下がって受注価格で2割ちかく下がっていては、利益など望むべくもありません。以前ならば、ここをついでにやっておいてくれ、というようなサービス工事もできていたのですが、今は赤字になってしまうのでできませんと断らざるを得ない状況です。
――かつてのイメージで公共工事は悪であるという報道が未だになされています。けれども実際は、いかに生き残るかで腐心されている状況が広がっているのですね。
川畑 鹿児島の県内でも地域格差というのがあり、都市部から離れた地域では農業と建設業が主な産業というところも多くあります。そういったところでは民需が期待できず、建設業は公共工事に依存せざるを得ません。けれどもこれだけ公共工事が削減されますと、どうしようもない状況が生まれてきます。農家の方々は農閑期に建設業を手伝うことで生計が成り立っているのです。公共投資が減ると建設業者は期間従業員を削減しなくてはならなくなり、農家は農業だけしかできなくなってしまうのです。公共投資が減るということは地域の体力をすり減らすことにつながるということも知っていただきたいと思います。「公共事業=悪」というイメージは、早くなくなってほしいと思います。
――マスコミも勉強せねばなりませんが、業界としても声を大きくして情報発信していかなくてはならないでしょう。
川畑 その通りです。これまでの建設業界は奥ゆかしいと言いますか、あまり声を上げずに目立たないことをよしとしてきました。けれども、今はそんなことは言っていられないように思います。給与が安くても仕事がハードでも世間から認められたならば、まだ救いがあります。すべてがダメとなったら、業界の未来を支える若者が魅力を感じるはずがありません。感謝される仕事であることは間違いないのですが、メディアの報道を見ると悪いことをしているように思われる方もいらっしゃると思います。情報発信を強めて行くことが業界イメージの改善を図り、活性化につなげていきたいと考えております。
――シンポジウムなどのイベントを企画していらっしゃると聞きました。シラス土壌のために土砂崩れが発生しやすい鹿児島では建設業が復旧に活躍していらっしゃいます。こういった情報の発信も今後はマスメディアを待つのではなく、自ら行なっていくが重要なのですね。本日は大変勉強させていただき、ありがとうございました。
【文責・柳 茂嘉】
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