内閣府が発表した2010年度・年次経済財政報告書によると、わが国における家計関連需要がGDPに占める割合は低下しており、住宅投資の減少が主な要因に挙げられている。また、今後のわが国の住宅着工数は、80~90万戸と100万戸を割り込むとの予想が、業界内外で大半を占めている。
住宅需要においては、人口動態が大きく関わってくる。経済白書では、その人口動態が住宅投資・リフォームの動向にどう影響を及ぼすかを分析している。その論点は、(1)住宅の質をどう見るか、(2)高齢化は住宅需要にどう影響するか、(3)高齢化でリフォーム需要は高まるか、以上の3点。
世帯数の増加テンポの鈍化を鑑みるに、今後の住宅投資は着工戸数では頭打ちとなる可能性が高いと分析されている。その戸数が頭打ちとなるなかで、キーファクターとなるのが住宅自体のクォリティの向上と既存住宅ストックの活用にあるという見解である。
その上で、住宅着工戸数が将来的にどうなるのか。世帯数は増加し続けるが、ペースは鈍化する公算が高い。06年から08年までの世帯数の伸びが近年のトレンドとの対比で高めであったため、09年以降の世帯数の増加ペースの低下速度が急激である。一方で、新設着工戸数に影響を及ぼすもうひとつの要因として、空き家率の動向が挙げられるが、近年では住宅需要のミスマッチを背景に空き家率は、上昇傾向で推移している。
それら世帯数と空き家率の動向を踏まえて、机上で機械的に将来の住宅需要を推計した数値は、ストック増分が1年あたり35~41万戸。建替分では1年あたり40~46万個と算出される。最近5年間の住宅着工戸数と比較すると、建替分は大きく変化しないものの、世帯数の伸びの鈍化を反映してストック増分は大幅減となる。
一方で、住宅のクォリティ改善を巡る動向を見ると、空き家率の上昇が続くという前提で、リフォームによって既存住宅の質を改善し、空き家を建替えずに再度居住することが広まる可能性もある。また、現状では耐震基準、環境基準など不十分な既存住宅ストックも数多く存在し、81年の新耐震基準以前のマンションの建替えなどが進めば、住宅着工戸数が増加する可能性もある。
【河原 清明】
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