私は感じている。日本・九州の大転換をしなきゃいけない、と。
―最後に、御社の活動内容をこれまでの話と絡めてお教えください。
出井 企業再生系のコンサルティングはたくさんありますが、私はあまりそういうことには興味がありません。親の代から頑張ってきたけど、この次はどうしていこうかといった、将来の新しい価値を今ある企業にどう加えていけばいいのか。クオンタムリープは、そういう新たな戦略、実行をサポートする会社です。企業のサイズを問わず、新しいビジネスをすることに対して関わってゆくというのが本質ですね。
そういう意味では、私が九州のコンサルティングを引き受けたら「こういう風にしたいな」という想いはあります。あと、アジアと日本をつないでいくにはどうすればいいかといったことも考えています。
人間の付き合い方にも色々ありますが、上から目線でアドバイスしていく方法、また仲間同士で考えるという方法などがあります。当社は上から目線ではなく、ある意味運命共同体として仲間同士で考えようという目線でやっています。それから、新しいことをやるためには、過去を振り返るばかりじゃなくて将来のことを考えないといけません。過去のことを持ち出してしまうと、企業はもちろんのこと、国の関係もおかしくなる。過去をしっかり清算することは大切ですが、どっちが上、どっちが下、という議論はまったく生産的ではありません。
観光なんかも、古いものにばかり頼ってしまってはダメだと思います。神社仏閣に加えて、九州が創る新しい価値というものを見せれば、みんなが惹かれるわけです。そういうものを海外の人たちが見ると、彼らは我々自身が気付いていないことに驚きます。別府温泉なんかも、街の人がみんな協力していろいろなおもてなしをしているじゃないですか。ああいうサービスの丁寧さ、礼儀だとかおもてなしの心、そういうものって実はまったく日本の人に知られていません。
そういう意味で、クオンタムリープはアジアと中国、アジアと日本とのつながりで、新しい価値を作りたいということをポイントにおいています。そこで、アジアイノベーションフォーラムというのを主催していて、過去に九州で2回やりました。
私は九州に2年行ってみて、素晴らしい人たちに出会いましたし、総合的にポテンシャルが高いとは感じています。インパクトを与える打ち手を一緒に考えられればなと思っています。本当に21世紀の社会になるための、大転換の時が来ました。このまま過去に引きずられて大変だなんて言っていても仕方ないのです。ぜひ九州の大転換を期待したいと思います。
【大根田康介】
<プロフィール>
出井 伸之(いでい のぶゆき)
1937(昭和12)年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。60年にソニー入社。95年に社長就任。99年よりCEO(最高経営責任者)を兼務。2000年、会長兼CEO。05年に退任。06年、クオンタムリープ株式会社を設立し、代表取締役に就任。産業の活性化や新ビジネス・産業創出を実現するための活動をグローバルに展開している。他にアクセンチュア、百度(Baidu)、フリービットの社外取締役、美しい森林づくり全国推進会議の代表などを務める。著書に『迷いと決断―ソニーと格闘した10年の記録』(新潮社、2006年12月)、『日本進化論―二〇二〇年に向けて』(幻冬舎 、2007年7月)、『日本大転換―あなたから変わるこれからの10年』(幻冬舎 、2009年9月)などがある。
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