長崎県建設業協会 会長 谷村 隆三 氏
離島の多い長崎県。大小合わせて約600の島があり、うち約70が有人の島となっている。県の面積に占める島の割合は38%、人口の一割が島に住んでいるという地方のなかの地方と呼ばれる地域が多くあるのが県の特徴だ。長崎市をはじめとする都市部と離島などの農漁村部では公共事業の意味する内容が異なっているという。費用対効果の測定は是か非か。長崎県建設業協会の谷村隆三会長に聞いた。
――公共事業が削減されている昨今、長崎県でも厳しい状況が続いているものと推察いたします。近況をお願いします。
谷村 長崎県建設業協会には9つの支部があります。それぞれで民間と公共工事の割合を調べてみると民需が公共事業を上回っているのはわずかに3つでした。それ以外は公共事業に頼っているという実態があるのです。都市部ならば民需で公共事業削減のあおりを受け流すことも可能なのかも知れないですが、いわゆる地方の地方、たとえば離島などではそういったことは不可能に近いのです。公共事業が建設業そのものの地域もあります。また、すべての地域で民間工事自体も縮小してきており、近年、より一層公共事業への依存が高まりつつあります。
――島の建設業では厳しい状態になっているのですね。
谷村 はい。公共事業は最近、費用対効果を推し量って予算を縮小する傾向にあるように思います。たとえば道路に1日何台の車が走っているといったような効果を測定するとします。都市部では1日何万台と車が通るでしょうが、農村地区などでは数千台くらいとなり、これでは全く費用対効果が上がっていないことになります。これを意味がないと切り捨てる傾向を見受けますが、それはいかがなものかと思います。そのわずかな車しか走らない道があるからこそ、都市部では新鮮な野菜が食べられるのですし、命にかかわるような急病人も運ぶことができるのです。地元にとっては、その効果の上がらない道路がまさに生命線なのです。
――国民の命を守る政治、とどこかで聞いたことがあります。実際は十把一絡げ(じっぱひとからげ)に公共事業を捉えて、必要なものまで削減対象にしてしまっているのですか。
谷村 大きな資本を持つ会社が受注するダムや高速道路などの大きな公共事業と、生活道路をつくったり側溝を掘ったり、小さな橋をかけたりといった、身の回りの生活に密着した事業も皆一緒に考えられています。これは意味合いが全くことなるものです。生活の質を向上させるものと生活を支えるものとを同義に捉えるのは違うのではないかと私は思います。
【文責・柳 茂嘉】
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