福岡県建設業協会 会長 松本 優三 氏
公共工事が10年間で半減している。建設業界にとって生死がかかる状況と思われるが、それは問題ではないと福岡県建設業協会の松本優三会長は言う。建設業界の抱える本当の問題とはいったい何なのか。松本会長の考える建設業の今を聞いた。
(聞き手:IB事業部リーダー緒方克美)
――総論的な部分からおうかがいします。建設業界の抱える問題の根本にあるものは何でしょうか。
松本 公共工事は明らかに減少傾向にあります。けれども、それは時代の流れであり、私たちがどうこう言う問題ではありません。私が考える問題の本質は需給バランスが悪いということに尽きます。
――工事の絶対量に対して企業数が多すぎるということでしょうか。
松本 需要に対して供給が上回っているとダンピング競争が始まります。そして、今まさに価格競争の真っただ中にあるのです。かつての建設業界が持っていた体質が社会からの批判を受けて変化を余儀なくされました。その変化のひとつが一般競争入札です。かつて指名競争をしていたときは、行政が業者を選別し公平な競争ができるようにするフィルターとして機能していました。このフィルターがなくなり、どんな企業でもランクごとに入札できるようになったのです。
――かつては行政が企業を選別することで階層化がきちんとなされていたように感じます。
松本 人種や民族などに対する差別はあってはならないと思います。けれども企業はそうではありません。他社とどこが違うのか、その違いを出すために一所懸命に努力を重ねているのです。一般競争入札になることは時代が欲した結果なされていることですから、それについてはどうこういうつもりはありません。しかし、新たな施策を実施する前提として、その先にある結果を見ていなくてはならないはずです。一点だけ失点があったとするならば、まさにその部分です。一般競争入札導入の際、業者に与えられたオプションはほとんどありませんでした。1円からの入札、価格は安ければ安いほどよいというスタンスで、行政は企業選別を放棄したのです。後に問題が表面化してきたため、打開策として総合評価制度が導入されましたが、そのような策は最初から考慮に入っていてしかるべきでした。行政は今一度、市民のニーズ、それに対応できる業界、企業を測る物差しを精確につくり直すことから初めていただきたいと思います。
――総合評価制度は考え方としては正しいと思います。けれども、実際に動かしてみると不公平感を覚える企業が出てきたり、分かりにくさがあったりと問題点も多いように感じます
松本 すべてをフラットにするというコンセプト自体は正しいのかも知れません。けれども実際問題として企業は一社ごとに違うのですし、その違いこそが企業の存在意義になるのです。そこを総合評価が埋めてくれるはずなのですが、必ずしも現実を写す評価になっていないように感じます。
【文責・柳 茂嘉】
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