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中洲バトルロワイヤル2010(24)~ある意味ソンな『福の神』
中洲バトルロワイヤル
2010年8月 9日 18:00

 1カ月ぶりに訪れた店での話――。ドアを開けるや否や、小生の顔を見た店の子が「ああ、よかった。これで何とかなる」と言った。店のなかを見れば、客はカウンターにひとり。その客も自分と入れ替わりで、そそくさと店を出て行ってしまった。残された客は小生ひとり。時は、花の金曜日の午後10時過ぎ、である。

 「何とかなる」とは、一体どういうことだ。断っておくが、小生の予算は人並み。来る度に店へ大金を落とすことはないし、落としたこともない。いよいよ切羽つまった店から、大いにたかられるのではなかろうか。その日、その店で小生の喉を潤したのは、セルフメイドの生唾であった。ごくり。

中洲 そんな小生の戸惑いを察したのか、「長丘さんが来てくれるとね。何でか分からないけど、お客さんが急に増えるんです。いやあ、助かりますよ」と、店長がフォロー。どんなお世辞かは知らないが、お世辞としてあまりうれしい話ではない。なぜか。その理由を言う前にチーママが口を開いた。「逆に長丘さんには申し訳ないんだけどね。うちがヒマなときに飲んだことないでしょ?」。
そう言われれば確かにそう。「ヒマ、ヒマ」という店長に、「嘘ばっかり」というのがおなじみのやり取りであったのだ。そんな話をしていると、6人の団体客がどっと店のなかへ流れ込んできた。その数分後、3人、2人と来店し、あっという間に店内はぎっしり。「ほらね」という顔でこちらを見ながら、女の子たちは店内へ散っていった。

 「店に来たとたん、他のお客さんが急に減ってしまう人もいます。もちろん、コワい人じゃないですよ。店にとっては貧乏神といったところですね」と、店長。雨男に似たようなものかもしれない。いつもヒマな店で飲む貧乏神も店に白い目で見られたりして、きっと気苦労することだろう。

 似たような話で、客の来るタイミングが重なることが最近よく聞く店の悩みだ。時間帯を分けて客が来てくれるとありがたいのだが、来店が集中するため、最悪の場合、入店をお断りすることもあるという。それもある程度パターン化されて予測できればいいのだが、いつ忙しくなるかはまったく分からないそうだ。

 先の話を真に受けて、これからは『福の神』として飲み歩こうかと考えた。小生が来た後に入った客の数に応じて、飲み代を安くしてもらうシステムなんてどうだろう?
 そんな妄想をしながらひとり寂しく飲んでいた。店が忙しくなったため、付きっ切りで小生の相手をしてくれるスタッフがいないからだ。店に喜ばれるのはいいけれど、ある意味ソンな『福の神』である。

(つづく)

長丘 萬月(ながおか まんげつ)
 1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。


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