株式会社 ワイエルインベスト 山本 亮社長
誰もが心の中に、「地球環境を守っていかなければいけない」と感じているのではないだろうか。しかし、その思いを実際に行動に移し、自分のお金を活動資金に当ててまで活動する強い意志はあるだろうか。
このような強い意志を持つ(株)ワイエルインベストの山本 亮社長に、植林を始めたきっかけ、日本人としてやらなければならないこと、マングローブ植林の今後の展望を弊社 長嶋絵美が聞いた。
―マングローブ植林を始めたのは、どのようなきっかけですか。
〈山本〉 植林事業を始めたのは、今から7年前からです。実際に植林を始めたのは、3~4年前のことです。現在の社名、ワイエルインベストへの商号変更をしたのは平成16年7月です。変更する前、『山本木材産業』といい海外の原木を伐採し輸入をしていました。ピーク時期は85億円の売上げをあげたこともあります。ただ現地の伐採した後の裸になった山を見るにつけて索漠な気持ちになることがありました。
そんなある時、25年前になりますか19世紀フランスの小説家シャトーブリアンの次のような言葉に遭遇しました。"文明の前には森林があり、文明の後には砂漠が残る"という一文です。この言葉にショックを受けました。これ以降、事業への情熱が薄れていってしまったのです。平成6年には事業環境を鑑みて山本木材産業の事業を停止しました。
―凄い精神的葛藤があり現在の事業に転換した邂逅があるのですね?
〈山本〉 確かに会社を閉めて悶々とした日を送っていました。死ぬ前には「どうしても山林伐採した現地には何か恩返しをしないと死に切れない」ということが頭から離れません。ある日のことです。シンガポール経由でジャカルタまで飛んでいたフライト中のことでした。スマトラ島上空を飛んでたいたときに延々と続く干潟を目撃したのです。この干潟のことが気になりだしました。各方面の方々の知恵も借り「干潟に植林をしてマングローブの森を作ろうと思い立ったのです。
そこで冒頭に述べました「平成16年7月に山本木材産業から現商号」に変えました。ここから環境ビジネスを手がけるようになったのです。グッドタイミングで翌年の平成17年2月に京都で国際環境会議が行われました。そこで「地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素を始めとした温室効果ガスの排出に制限を設けよう」という京都議定書が発効されたのです。「これは非常に画期的な時代の到来」と認識をした上で、インドネシア共和国にてマングローブ植林による温室効果ガス排出権事業の事業調査を開始しました。
―他に同じような事業をしているところはないのですか。
〈山本〉 全くないですね。インドネシアの地元住民が生活するために自然を壊すジレンマに陥っています。例えばマングローブの森を壊しそこにエビの養殖地を作ったりするのです。しかし、そのような養殖場は5年で駄目になります。マングローブの森がなくなると自然の生態系が壊れるからです。エビやカニの餌が乏しくなり漁穫高が激変します。現地住民は、生活に困ってしまい、私たちに助けを求めてきました。
住民は苦い生活体験から「マングローブの森の大切さ」を認識しています。だからこそ植林には協力的です。また労務作業代を手にすることの有難さを理解してくれているので熱心に働いてくれます。村の行政単位で植林事業を委託していますが、1,000人単位での植える作業は圧巻です。あくまでも地元の人たちの英知を活用することが重要ですね。
ここで養殖しているエビにしても南洋備長炭(バーベーキューに利用する炭・マングローブの樹木から炭にする)にしても、ほとんどが日本に送られているんです。日本人の生活維持こそが「マングローブの森」を荒廃させる原因になっています。だからこそ、日本が真剣に取り組む義務があるのです。
―いままでに、どのくらい植えたのですか?
〈山本〉 いま現在、インドネシア共和国から許可を得ている干潟の広さは10万haです。そして、現在、植えたのは1万6200haの広さになりました。ここまでで、見通しとしては5割ぐらいの植林できる目処がついたと言えます。各方面の協力を仰いで一刻も早く10万haの森つくりに成功したいものです。どうも事業の展開が早まるほどに地元行政及びインドネシア政府からの相談案件が増えそうな予感がしています。
10万haの植林の総事業費は300億円とみています。その他にインドネシアには220万haの「マングローブの森」を作りだす場所があるのですが、ここを森として再生すればかなりのCO2放出量を吸収できるのです。国民の方々も是非、「マングローブの森」がいかに地球温暖化ストップに貢献できるかをご理解いただきたいですね。本当にインドネシアという国は親日です。大事なパートナーであることを忘れてはいけません。ですから日本政府はもう少し積極的にこの事業に関与して貰いたいと考えています。
―今後の課題はなんですか。
〈山本〉 インドネシアの伐採は、まだ止まっていません。ですから「木を切るよりも止めた方がプラスになる」という経済的仕組みを構築することが問われています。ある木材に詳しい人の話では、「木は立っている時の価値は30倍あるのに、切ってしまった木材は市場には30分の1の価値で流通していない」そうです。立っている木そのものを価値があるものにしていかなければならないと考えています。
―資金調達はどのようにしているのですか。
〈山本〉 来春には、最終的な承認を頂けると思っているところです。今、国際連盟の方に私たちが行なっている事業=【マングローブの森つくり】がCO2削減に効果あるという認可の申請を行っています。この許可が下ると、「CO2排出権」ビジネスが可能になります。そうなれば日本の企業は私たちの事業に関心を示してくるようになるでしょう。また、日本だけではなくヨーロッパの人たちが資金提供に動きだしてくることは目に見えています。ですから、今後は「マングローブの森作り」がビジネスになれば利益を得て、それをまた、「マングローブ植林」に投資循環構造が完成されていくと確信しています。
―最後になりましたが、「やまじい」と呼ばれながら全国の子供たちに地球環境を教える伝道活動されています。この点に関して紹介ください。
〈山本〉 ある人から、「この事業は子供たちに教えていかなければいけない」と助言されました。それが、きっかけで小・中学校の講演に廻っています。最初は「子供たちが、ちゃんと聞いてくれるのか」と心配でした。しかし、いざ子供たちの前で講演をしたところ、目をキラキラさせながら聞いてくれているのです。杞憂でした。講演して数日経過したあとで「インドネシアの子供たちに送って欲しい」と、子供たちが生徒会を中心として、鉛筆や消しゴムを集めて私のところに送ってくれたんですよ。子供たちの感性は素晴らしい。こちらが感服します。これからも「やまじい」として子供達に「マングローブ森作り」事業の意味を教えていく所存です。結果として、それが大人たちに伝わってくれればいいんですがね。
―日本全体でもっと積極的に活動していかなければならないのですね。本日はご多忙の中、ありがとうございました。
【会社概要】
(株)ワイエルインベスト
代 表:山本 亮
所在地:福岡市中央区天神4-1-11天神YLビル9階
TEL:092-716-3065
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