福岡県町村会事件をめぐる贈賄容疑で問われ、現在公判中の山本文男前町長(84)=前全国町村会長。そして、同氏の辞職に伴う町長選挙が開かれる添田町。「次の町長に引き継ぐため」と同氏が立候補の意思を表明したことにより、国定公園の一部をなす英彦山(標高1,200m)のふもとの同町が今、注目を集めている。
12日、社団法人 田川青年会議所が主催する、添田町長選挙に伴う公開討論会が行なわれた。会のタイトルは、「どうなるの添田? どうするの添田!~まちづくり生討論~」。会場の添田町オークホールに集まった聴衆は、主催者側の発表によると約500名。討論会には、パネリストとして、山本前町長のほか、町長選に立候補予定の前副町長の寺西明男氏(60)と会社員・山本文隆氏(62)が参加した。
討論では、事前に実施した住民アンケートをもとに、添田町の課題、政策、方向性といったテーマについて、順番に発言する形式。添田町の主要産業である農林業のほか、企業誘致、観光振興などを中心に各パネリストが発言した。
山本前町長は、農産物の加工による収益の倍増、材木による発電、輸送コストを考えた上での企業誘致を主張。また、観光振興の中心に英彦山の整備事業をあげ、楽に頂上へ登れるようにする考えを示した。寺西氏は、公募によって町民が参加する「町民刷新まちづくり協議会」の設置を強調。観光客を多く招き寄せ、定住人口の増加へとつなげたいと述べた。山本文隆氏は、観光振興のみによる町おこしは困難との考えを示し、企業誘致を主張、また、添田町の文化を見直し、添田町オークホールを活用する考えを示した。
討論会の最後、山本前町長は「(私は)まだまだ未熟。これからも勉強して期待に応えられる人間になりたい」と、謙虚な姿勢を見せた。寺西氏は「全国が注目している。添田町の良識が問われている」と、山本文隆氏は「混乱の回復、町民との一体、しがらみからの脱却が大きな前提」と、それぞれ聴衆へ訴えた。
一方、討論会を傍聴した町民からは、「新しい町長にして、町政を一新すべき」(60代男性)、「前町長は引退して後見人になるべき」(40代女性)、「いつまでも『やり残したことがある』と言っていたら、300歳になっても足りん」(80代男性)など、さまざまな意見があった。加えて、会場に押し寄せた取材陣に対し、積極的に意見を述べる町民が多い様子からも、今回の町長選に対する関心の高さがうかがえた。
なお、山本前町長が再選した場合、公職選挙法の規定により、任期は来年(2011年)の1月末までとなる。同町長選は、17日に告示され、22日に投・開票が行なわれる。はたして、町民はどのような判断を下すのか。オークホールのロビーにある山本前町長の胸像は、会場を後にする町民たちの姿を静かに見つめていた。
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