<超額募金の弊害>
2009年のIPO改革以降、特に今年に入って、稀に超額募金が発生しています。超額募金とは、予定を上回る金額が実際に集まることです。
改革後、株価の設定は市場関係者の協議によって決定されるようになりました。それぞれが自分自身の利益の最大化を追及するために、できるだけ高い発売価格に設定するのです。加えて、昨年政府が実施した大規模な経済刺激策の煽りで、流動通貨が過剰になっています。限られているものに対し、より多くの通貨が出回ることで、想像以上のPER(※)倍率になる可能性が出てくるのです。
前述の「海普瑞」社を例に挙げると、同社の8.65億人民元を調達する計画は、実際に株式市場で高く評価され、同社は59.35億人民元を手に入れました。元の計画から6倍以上の結果を得ることとなったのです。
当然のことながら、より多くのお金があるということには、企業の資金繰りが改善され、将来の成長にも更なるチャンスを生み出すなど、様々な利点が挙げられます。
しかし、各企業も体質や所属業界が違うので、それなりの資金しか消耗できない、と専門家が指摘しました。美味しい食事を食べたいところですが、各人の食欲に合わせた食事にしなければ、栄養の吸収もなされず、健康を促進できない、いうことです。
今までに、一部の企業が超額募金で手にした資金を不正に支出したことがたびたび摘発された、とする報道もあるそうです。本来、企業は自社の優位性を踏まえ、本業あるいは周辺産業を育てるもの。しかし、その分の予定外の資金を再び株式市場に投入し、株式の売買をすることで儲かるようになっているのです。しかし、株式市場は非常にリスクが高いところなので、台無しになることも少なくありません。また、このやり方によってバブルが堆積すれば、市場全体から見ると、大変危険なことになるのです。
あるいは、超額募金は投資家の資金として、無駄遣いされる恐れがあります。したがって、企業や投資家に責任を果たすため、必要な分だけ融資するよう、専門家が制度改善や政策改革を政府に呼びかけています。
※PER...株価収益率。一株当たりの純利益で株式を割ったもの。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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