10年間で半減した公共投資。パイが縮小される中で建設業界はまさに生き残りをかけた戦いが繰り広げられている。建設業界がまばゆく輝いていた時代はすでに過去のものなのだ。建設業界の現状を九州4県の建設協会会長に聞いた。そこには一般のマスコミが報道しない事実がここにはあった。
<落札率95%以上は談合か?>
――かつては談合が行なわれ、不当な利益をむさぼっているというイメージが市民の中に定着し、それが今も続いているようです。
谷村 私が建設業界に入る以前、異常な体質が業界にあったことは事実のようです。仕事をとるための細かい査定がなかったため、仕事を受注する気もない企業であるにもかかわらず手を挙げるだけはするといった行為です。声を上げると本当に受注したい企業が今回は辞めておいてくれとお金を渡して手を下げさせていたようです。こんな状態ですから反社会的な組織やでたらめな企業が入札に参加するなど非常に怖い業界となってしまっていました。これではいけないと、その後にきたのがお金によらない話し合いによる談合の時代です。今回は私が泣くから次回は泣いてくれ、といった話し合いが成されていたようです。これも一般社会的な認識からはずれがあるやり方ですので、今は排除されました。
――そういった歴史が実際にあったために、今も落札予定価格の95%以上は談合であると見るマスメディアが多いように感じます。
川畑 現実を見ると同じ工事であっても10年前は1,000万円だったものが今では800万円くらいにまで予定価格が下がっています。これをベースに競争がなされて、おしなべて80数%で受注しています。つまりかつての1,000万円の工事が今では650万円あまりで落札されているということになります。同じものをつくるのに3割以上値が下がっているのです。昔なら現場で「ここもついでにやっておいてくれないか」と言われても「はい、いいですよ」と受けていられたのですが、今はそうはいきません。それをすると赤字になる、もしくは赤字の幅が大きくなってしまうからです。
永野 現在は公共工事で黒字化するのは厳しいのです。労務費の下落の一点を例にとってみますと、労務費はこの7年間で4割近く下げられています。一般企業で4割も労務費が下がるということは常識的に見ても異常なことだと思います。
――とても厳しい現状にあることは分かりました。そういった状況での工事受注であるにもかかわらず95%以上の落札は談合である、そしてそれは悪である、という論調は現実を見ていない気がします。予定価格自体が下落しているので、そうならざるを得ないのが現実なのですね。
梅林 工事の落札価格そのものが低くなってきていて、そのなかで専門性を養っていかなくてはならないというのは大変難しいことです。適正な価格で受注できる環境を整備することが必要だと思います。もちろん法令順守はしなくてはなりません。かつての入札制度の悪い点を改めるために一般競争入札を導入しました。次いで低価格受注による品質低下を防ぐために総合評価制度が始まりました。その制度によって公平な競争環境ができあがっているかと問われるとまだ充分ではないように感じます。
<出席者> | |||
大分県建設業協会 梅林秀伍会長 |
長崎県建設業協会 谷村隆三会長 |
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宮崎県建設業協会 永野征四郎会長 |
鹿児島県建設業協会 川畑俊彦会長 |
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