<新たな客層の開拓>
―具体的なところで、どのような工夫をされましたか。
川原 あえて飲食ブースを設置せず、禁煙にしました。ジャズを聞くお客さんは、純粋に音楽を楽しむ方が多いこともあり、みなさんにマナーを守っていただけました。
中岡 前もって「飲食物は出しません」と断っていたことも良かったと思います。飲み食いを目的とするのではなく、音楽と中洲のまち全体を楽しんでいただくことを目的としたのです。それこそ中洲には飲食店が豊富にあるわけですから。
―ジャズ喫茶を作るのではない。それが「まちをジャズで彩ろう」ということですね。
中岡 そうです。中洲のまち全体がステージなんです。
川原 毎年10月に行なう「中洲まつり」にも、ジャズ・フェスティバルで得た教訓を応用していきたいと考えています。今まで中洲大通にワゴンを120台出していましたが、今年はそれをやめ、飲食したい方はお店に入っていただこうかと考えています。
その一方で、今、「中洲探訪」という計画を考えています。中洲の歴史や有名店をナビゲーターが案内するというものです。中洲には数多くの歴史あるお店があります。戦後、最初にできた人形小路、吉塚うなぎや大阪屋といった名店。メキシコ料理の日本発祥と言われる「ロシータ」もありますね。ジャズ・フェスティバルも含めたこれらの企画には、新しい客層を開拓するという目的もあります。そのためには、中洲をもっと知ってもらわなければなりません。
―今年の第2回では大きな変更はありますか。
中岡 昨年は3つだったステージが、今年は5つに増えています。増設するのは、貴賓館前とキャナルシティ博多前にある清流公園です。一方、中洲大通には昨年同様に3つのステージを用意します。中洲全体を歩いていただこうという狙いがあります。
また、PRにも力を入れており、現在はテレビやラジオによる告知、ホームページ、ツイッターでも宣伝しています。メディアでは、今年は5万人ぐらいの集客があるのではないかと言われています。
<人と人とのつながり>
―こうした大きな行事を素早くやれる理由は何ですか。
中岡 これだけ一丸となってやれる町はなかなかないと思います。ひとつは、山笠などの伝統行事の存在が大きいですね。そのなかで作られた、人と人とのつながりが中洲にはあります。
川原 その一方で、中洲はよその土地から来られる経営者など、人の出入りが多いところでもあります。大々的なまち全体のイベントを行なうことで、新しく来られた方々も取り込み、より一層、まちの一体感を強めたいと考えています。
―これからの中洲についての展望をお聞かせください。
川原 まず、暴力団排除条例に基づき、『安全・安心のまちづくり』を土台に進めていきます。当面の課題は、まちの観光案内体制です。現在、中洲の総合観光案内所は15、6店舗ありますが、中洲観光協会の公式な案内所を作りたいと考えています。
来年の3月、九州新幹線が全線開通することで観光客の増加に期待が持てます。そうした人々が迷わないような案内所を作りたいですね。さきほどお話しした『中洲探訪』の企画もあわせて進めていきたいと思います。
その一方で、中洲大通の交通規制、駐輪の問題に取り組み、歩行者が安心して歩けるようにします。現在、中洲に駐輪禁止区域を作ることを行政と検討しています。前回(2月)に、タクシーの社会実験が行なわれました。12月には、中洲大通に交通規制をかけ、アンケートを実施する社会実験を行ないます。将来的には、中洲大通を歩行者天国にすることが目標です。
―福岡市民のひとりとして、観光客に自慢できるような歓楽街・中洲になることを期待します。これからも頑張って下さい。
【山下 康太】
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