7月26日の推薦願提出から約1カ月、紆余曲折を経て、現職・吉田氏の福岡市長選における民主党の推薦が決定した。その最大の功労者は、民主市民クラブ代表の江藤博美・福岡市議会議員。すでに報じられている通り、民主党福岡県連内で吉田氏推薦に対するさまざまな反対意見があるなか、推薦を取り付けたのは、一重に江藤氏の辣(らつ)腕によるところが大きいだろう。
4年前(2006年)の福岡市長選挙――。新人として立候補する吉田氏が民主党の推薦を得られたのは、当時、県連幹事長として「剛腕」を発揮していた助信良平・福岡県議会議員によるところが大きい。もっとも、助信氏は、刎(ふん)頸の友である北橋健治氏を北九州市長のポストに付けるべく、吉田氏を福岡市長候補に迎えたのだが...。ともかく、助信氏が福岡市議団をはじめとする党内の反発をねじ伏せたことで、今の吉田宏福岡市長が誕生したのである。
それから4年が経ち、吉田市政に対するさまざま批判・不満が世間に蓄積された。民主党自体も政権交代後、追い風を失い7月の参議院選挙で敗北、「ねじれ国会」の誕生。そうした厳しい状況下で吉田氏を推薦することは、言わば「火だるまになった上で火中の栗を拾う」ようなもの。加えて、選挙時に中立の立場を取り応援をしない、政策に関する意見交換を行なわないといった吉田氏自身の民主党への向き合い方も極めて評判が悪い。以前よりも増して、民主党福岡県連内から異論、反論が出る状況だった。
このようななか、江藤氏は敢然と「吉田氏推薦」を主張した。まず市議団の反対派を説得、吉田氏賛辞の「最上級」とも言える吉田市政についての市議団総括を作成。また、推薦の検討すらされていない段階で、枝野幸男・民主党幹事長に吉田氏を面談させるなど、巧妙な内部工作と積極的パフォーマンスを展開。党内からの批判には自らが楯となり、吉田氏推薦へ向け着実に歩を進めていった。江藤氏にとって、「吉田氏推薦」は、これまでの政治キャリアの集大成と言ってもよいだろう。
もちろん「推薦」がゴールではない。これから11月14日の投開票へ向け、乱立する他の市長候補予定者を相手に壮絶な戦いが繰り広げられる。9月の民主党代表選による党内状況の変化もあるだろう。そのなかで江藤氏がどのような辣(らつ)腕ぶりを発揮し、吉田氏支援体制を構築していくか。今後も目が離せない。
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