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末吉興一・前北九州市長に訊く~自治体経営の極意(2)
行政
2010年8月10日 08:00

2.北九州ルネッサンス
 5期20年間、末吉興一前北九州市長(75)の手腕なくして現在の北九州市の発展は考えられない。在任中に総額3兆8,000億円もの予算を投入、成し遂げた事業は「エコタウン」「新北九州空港」「北九州学術研究都市」「響灘大水深港湾」など書ききれないほどある。しかも、それほど金を掛けながら、地方自治体の財政指数のうち最も重視される「実質公債費比率」を全国政令市のトップの成績に押し上げるなど、驚くべき実績を残している。「このことは誰も言ってくれないから、自分で言っていますよ」とお茶目な顔も見せる。

 末吉流の首長術の秘訣について聞くと「秘訣なんてないよ、選挙の公約に従ってしっかりと仕事をしてきただけです。長期展望に立ってslowly(ゆっくりと)に着実に実行してきました」という。

北九州市役所 市長に就任した1987年当時の北九州市は、鉄冷えの真っ最中で、市民の7割以上が市の将来に不安を抱いていた。JR九州本社が門司区から福岡市へ移転、鉄の都の新日本製鐵も高炉を1基体制にするなど明るい材料は何ひとつなかった。
 まさに満身創痍の北九州市に、"治療"として打ち出したのが「北九州ルネッサンス」である。イタリアで14~16世紀に起きたルネッサンス(文芸復興)を市の「再生、浮揚」になぞらえた。「今とは時代背景が大きく違いますね。まずは地方が出来ることを最大限にやって行こう、との考えからスタートしたのです」(末吉氏)。

 基本構想は、1988年から2005年までの長期にわたる。基調テーマは「水辺と緑とふれあいの"国際テクノロジー都市"へ」で、世界への飛躍も考えた都市再生へのシナリオだ。さらに(1)「緑とウォーターフロントを生かした快適居住都市」(2)「健康で生きがいを感じる福祉・文化都市」(3)「あすの産業をはぐくむ国際技術情報都市」(4)「海に広がるにぎわいの交流都市」(5)「未来をひらくアジアの学術・研究都市」の5つの未来像を掲げた。2010年の現在から見れば、5つとも実現しており、市長の先見の明と、職員の努力がうかがわれる。
 「トップは不合理なことは是正し、率先して不退転の覚悟で何事にも当たるのが仕事です。それまで、職員は国や県の方針に基づいて役割分担を果たしておけばよかった。しかし、それでは新しい事に挑戦出来ません」(末吉氏)。

 しかし、公務員の意識改革、これが最大の難問であった。「職員の意識を変えるのが一番大変でした。そんなに簡単に変わるものじゃない」(末吉氏)。
 市長が指示を出しても「前例がない、予算がない、法令がない」の「三ない主義」で職員の腰は重い。その言葉を禁句にし、事業推進担当7部局に300万円の「活性化推進費」を付けた。「俺が責任を取る、飲み食い以外ならどう使ってもいい」
 ここまで市長が手を打てばもう「予算がない」などの逃げ口上は言えなくなった。

(つづく)
【関戸 幸治】

<プロフィール>
末吉 興一  (すえよし こういち)
末吉興一氏1987年から2007年までの5期20年間、北九州市長を務める。34年(昭和9)9月20日、兵庫県生まれ、75歳。58年、東京大学法学部卒業後、建設省に入省。60年、大分県松原・下筌ダム工事で用地課長。宮崎県企業局、自治省に出向、大臣官房地域政策課課長を経て85年、建設省国土庁土地局長から市長に立候補。市長退任後、外務省参与、内閣官房参与(地域再生担当)を務めた。現在は、(財)国際東アジア研究センター理事長(北九州市小倉北区)。著書に「自治体経営を強くする『鳥の目』と『蟻の足』」(出版社:財界研究所)がある。


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